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元々一浪計画だったから、部活引退から本命の入試まで1年半あった。
抜け殻期間を脱してからは受験勉強にシフトし、俺は祖父の背を追うことに決めた。
何とか一浪で医学部合格を決め、もういいと思ってたくせに誘われるままに大学のサッカー部に入部してしまった。
でも入ったら入ったで、また楽しくて。
高校までのような身を削るような真剣勝負ではないけれど、それでも大会がありみんなで優勝をめざし。
医学部リーグでも何度か頂上を取りながら、五年まで部に所属した。
さすがにそこからは本業第一に切りかえ…研修医を経験し、祖父の紹介でいくつかの診療所で働き…いい加減引退したいと言う80を過ぎた祖父から医院を引き継いだのは、俺が30を超えた頃だった。
もう、六年くらいになるかな。
祖父がこの場所に開業したことに、深い理由はなかったらしい。
元々この当たりの地主一族だったとは聞いた。医院を新規開業するときにまず必要なのは、土地だ。もちろん、周囲の住宅環境や同業者の位置も含めて、経営が成り立つかどうかということは大事だけれど、土地と建物がなければ何も始まらない。
この辺は結構田舎で、祖父の父親名義で放置されていた土地を譲り受けたとかなんとか言ってたかな。だから、結構適当と言うか…場所があったからここにした、みたいな感じ。
でも、都大会決勝レベルまで行ける高校が近所にあって、校医を引き受けた縁で祖父の代から付き合いはあったらしい。そこが俺の出身校になったわけだな。
俺は、自分が二代目院長になってすぐ、ちょうど代替わりした殿前サッカー部の酒井監督と意気投合し、チームドクターをボランティアで引き受けてしまっている。
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