26人が本棚に入れています
本棚に追加
運動部推薦の枠は、各学年二クラス分。
全体で80人といったところか。
その中に野球部とサッカー部、女子ラクロスの部活動推薦が含まれる。
水泳や陸上にも何人かずついるかな。
俺はサッカー部の専属医だけれど、他の競技の生徒も医院を訪ねてくれば普通に診察する。むしろ、『殿前のサッカー部の専属医』という肩書から、ほとんどの生徒がうちに来てくれているかもしれない状況だな。
日々の練習を見守る中で、最も必要とされるのが、ちょっとした怪我のちょっとした処置だ。
血が出た系の怪我は、自分で洗って拭いて、ベタッと何かを貼って止血できればいいから、自分ででも対処できる。でもひねったときは正面から他人に処置してもらった方が、絶対にいい。
自分の感覚が邪魔して、正しい方向に固定できないことが多いから。
そして、骨やら筋やらの作りを理解していない人間に、正しい固定はできない。ただ固めたって意味がないんだ。
もう完全に動くな、というレベルの固定から、まぁここまでならいいだろうという固定、公式大会の最中だから本当は動いてほしくないけど、仕方ないからここまでなら…という固定。
患者の状況によって、同じ個所の同じ怪我であってもこちらの対処は変わってくる。
さすがにそこまで本格的に教える時間はないから、マネージャーには高校生がよくやる怪我の仕組みだけ絞って教えて、基本の巻き方を叩き込んである。
俺が何年もかけて、マネに本気でテーピングやら簡単な処置やらを教え込んだ結果、今では多少の怪我では俺のところに連絡すら来ない。
マネの手に負えないと判断したら、俺のところに送り込まれてくるような感じだ。
一番大事なその判断基準も、ことあるごとに勉強会を開いて教え続けている。
最初のコメントを投稿しよう!