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まずは…昔の俺のこと?
俺の名前は大塚彬良。
祖父が整形外科医、父親が内科医という医者一家に生まれた。
でも母親は、ありがちな看護師とかではなくて、教師だ。
結婚するときにかなり時間をかけてその辺は話し合ったらしく、母親は結婚後も仕事を辞めなかった。定年まで教職を勤めあげて、最後はなんと小学校の校長まで勤めて、最近ようやく退職したところだ。
現代ならともかく、両親が若い頃は開業医の妻は同じ医院で働いていることが多かったと思う。看護師であったり医療事務であったり、時には別診療科の医師であったり。
子供の頃にはわからなかったけど、自分が大人になって医学の道を歩み始めてみれば、当時の両親の気持ちも、それ以上に祖父の気持ちもわかるようになった。
今更聞きもしないけど、まぁいろいろあったってことだろう。
俺の祖父は、一般家庭に生まれて医学を志した変わり種だったらしく、曾祖父の世代はよく知らないけど、少なくとも医師ではなかったと聞いている。だから祖父は、医大を出て数十年働いて、俺の父親が中学生になる頃に自力で開業したようだ。
俺が物心ついたころには、祖父は既にこの医院の院長だったし、父は大学病院の勤務医で母は教師だったな。
父親自身も、元々はいつか自分の父を助けて後を継ぐつもりで医学部に進学したんだろうけど。
父が祖父とは違う診療科を選び、勤務医として生きる道を貫いたのも、母と共に生きることへの意思表明というか、覚悟…だったのかなと思ったりする。
父と祖父との関係は、俺から見ていればそんなに悪いわけではないと思う。
でも、お互いにすごく遠慮し合っている、かな。
その割には、完全二世帯とはいえ同じ敷地内にずっと住んでるんだから、よくわからない。
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