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でも俺は、高校進学の時点でサッカー以外の道を全部塞いで、一直線でプロを目指す決断ができなかった。
その頃には既に、祖父の後を継ぎたいと思う気持ちも少なからずあったし、結構冷めたガキだったから『プロになったって、40歳前に引退した後は何をして生きていくんだろう』とか、現実的なことを考えたりもしてたな。
自分が、しゃべることを得意としていないということは、その時点でもう十分すぎるほど理解できていた。
引退後の仕事と言えば…解説者? チームのコーチから監督をめざすか? 少年サッカーの指導者?
いずれにしても、言葉に不自由な人間がやれる仕事じゃない。
それに、俺のしたいこととは、どれもぴったり来なかったんだ。
もうちょっとサッカーをやっていたい気もするけれど、サッカーで食っていくことをめざすつもりもない。
じゃぁ何になるんだと言われれば、まだ即答できる「何か」を見つけているわけでもない。
中途半端な子供。
で、選んだのは文武両道を掲げる私立高校。
自宅から通える場所で、ほぼ毎回全国に出場しているようなところ。でも、学力もかなり高くて、一浪覚悟であれば毎年結構なレベルの大学に進学を決めている。その実績の中には、医歯薬も必ず何人かが入っているような学校だったんだ。
これだと思った。
もうちょっと、心を決めるのに時間が欲しい。
それが当時の俺の本音だったかもしれない。
本当は、決まってたんだけどな。
だって、その時点でサッカーへの道を歩いていた俺が、そのまま進まずに他の道を確保したということは、そういうことだ。
自分でもまだ、本心を直視する覚悟がなかったんだろう。
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