除霊師とは

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除霊師とは

 宗介は父親と二人暮らしをしている。    父親の職業は占い師。家の一階が小さなお店になっており、女性客を中心に簡単な占いやお守りなどのグッズ販売を行っている。稀に順番待ちの列ができるほどで、地元では少しばかり有名な占いの館だ。    だが、それはあくまで表向き。    店の実態は、心霊現象に悩む人々の駆け込み寺である。    普通の寺や神社では手に負えない人間――強力な呪いや悪霊に取り憑かれた者が、たらい回しにされた挙句、最後に辿り着く場所がここなのだ。        宗介たちの世界では、霊が視える人間を『霊能(力)者』と呼んでいる。霊能者と聞くと、特別な人間に思われるかもしれないが、全くそんなことはない。      俗に言う「霊感のある」人(神社の神主やお寺の住職なども)がこれに当たり、人口の二~三パーセントほどは霊能者だと言われている。平たく言えば、クラスに一人くらいは霊能者がいる計算だ。      そんな霊能者の中でも、霊視だけに止まらず霊に対して能動的な働きかけができる人間――宗介たちのような人間を『除霊師』と呼ぶ(具体的には、悪霊を祓ったり、呪いを解いたりできる人間を指す。そして、除霊師の中でも、特に呪術に長けた者を『呪術師』と呼ぶ場合もある)。無論、除霊師になるためには厳しい訓練が必要だが、訓練すれば誰でもなれるわけではなく、血筋や生まれ持った才覚の影響が非常に大きい。      ところが、霊能者の中には、霊が視えるというだけで除霊や解呪を生業にする者も少なくない。酷い場合になると、全く効果のない品物を高額で売りつける輩も存在する。      そして、たとえ本物の除霊師であっても、その力はピンキリで、悪霊や呪いの強さによっては対処しきれない場合も多い。    宗介の家は、そういった周囲が匙を投げたモノを専門に扱っている。    そして、今日も――。
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