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「ぼ、ぼくのお気に入りのベッドが……」
拉げてしまったそれは、最早ベッドとは言い難い。鉄くずと布団で構成された、かつてベッドだった何かと言っても良いだろう。一級市民ならば直ぐに捨ててしまうのだろうけれど、三級市民たるぼくはそんなことしない。勿体ないし、仮に捨てたら直ぐ同じ三級市民が持ち去ってしまうだろう。
ともあれ、何故ベッドが拉げたのか。
先ずはその原因を確かめなければならない。
ベッドの中心は凹んでいて、布団に何かが包まっている。偶然と言えば偶然なのだけれど、その布団で上手くクッションのような役割を担っていたようだった。仮に機械が落ちてきたとしても、クッションがあれば少しは傷ついていないかもしれない。
でも、何が落ちてきたんだ?
落ちてくるとするなら、この街の中心にある上層街からだろうけれど、そこから出るゴミは決して下層街の上空に落とすことはなかったはずだ。上層街と下層街を繋ぐ中央塔が昇降機の役割を担っているためだ――なんて何処かの噂で聞いたことがある。ぼく達三級市民には、一生乗ることの出来ない代物ではあるだろうけれど。
「……いや、それは良いんだ」
布団に包まっている物は、丸い形をしていた。完全な球体ではなく、何処か楕円の形をしているような感じだ。
そして、それがゆっくりと蠢き出したことで――それが機械などの無機物ではなく、何かしらの生物――つまり有機物であることを理解した。
「……え? 何処から落ちてきたのかは分からないけれど……生きているのか、これ」
仮にそうであったとして、大分失礼な物言いをしているような気がする。
しかしながら、何処から落下してきたか分からない以上、その何者かについては疑念を抱かざるを得ない。
「……ええい、ままよ!」
こうなれば、どうなったって構わない。
意を決して、ぼくは布団を捲った。
そこに居たのは――一人の少女だった。
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