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輝いて見えるほどの銀髪に、絹のような肌。
一番の問題が、その身体を隠す物が――とどのつまり衣服が――何一つないという点。
かろうじて長い銀髪で隠されているとはいえ、それは最早三級市民の間で出回っているようなポルノ雑誌に近い。今時こんなグラビアも見たことない。
しかし――どうして自分はこうも普通じゃない状況で平然と居られるのだろうか。
普通、こういう環境においては困惑するなりあたふたするなり慌てるなりしてもおかしくない。しかしながら、今のぼくは何故だか平静を保っている。それはそれで問題なのかもしれないが。
「……う、うん」
目を覚ます。それを見てぼくは冷静に視線を落とした。
少女はぼくの方を見て、ぽつりと呟いた。
「ここは……どこ?」
「……ここは下層街だよ。まさかとは思うけれど、それすらも知らないなんてことはないだろうね?」
「……だう、なー?」
「駄目だ、全く情報を受け入れてくれていない」
予想は出来ていたが、まさか記憶喪失だとは。
そうなるとこちらの選択肢も色々と失われてしまう訳だが。
「あなたは……だれ?」
「…………先ずはそちらが名乗るべきじゃないか?」
「わたしの……なまえ?」
「まさかとは思うが、ほんとうに何も知らないのか? いや、下層街のことを知らない時点で何となく想像はしていたとはいえ……」
「?」
ふと、そこで彼女の胸に目が行った。
いや、正確に言うと胸元。そこには黒色の線が幾つか縦に並んでいる。線の太さは均一ではなく、細かったり太かったりしている。そしてその上には、一つの単語が書かれていた。
「……プネウマ?」
「あ、あの……」
「うん?」
「ふくが……ほしいです……」
服を着るという概念はあるのか――とは突っ込まずに、取り敢えず服を調達しなければならない、そう思ってぼくは深く溜息を吐くのだった。
空から落ちてきたこの少女について、調べる必要があるのは間違いないことなのだから。
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