第二話 鋼鉄の背骨 Steel_Spine.

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 案外あっさり開くものなんだな。もっと仰々しく扉が開いていくものかと思った。例えば、クイズとか出題されたりして。生まれた時は四本足、死ぬときは三本足。これってなーんだ? 「それってスフィンクスの謎解きじゃないんだから……。ちなみに答えは人間、でしょう? 生まれた時ははいはい歩きをするから四足歩行になって、死ぬ直前になる人間というのは大抵杖を使っているから、足の二足に追加して一本増えて……三本になる、って訳よね」 「あり? そうなのか、てっきりもっと小難しい言い回しなのかと思っていたぜ……。それにしても、ライト、お前さん色々博識だなあ! おれの上司にも似ているような気がするけれど、あいつとは明確に違うポイントがあったりする訳だし、そいつと並べて話すのもどうかとしている、って訳だな」 「上司? 管理者って言っていなかったか?」  言っていないような気もするけれど、念のため。 「言っていねえよ、そんなこと。おれの仕事はあくまでもこの機械をメンテナンスする仕事。管理職になって部下をこき使うのは性に合わねえよ。それに……おれとしては身体を動かしていくのが一番ベストなやり方だと思っているしな!」 「一番とベストが重複した使い回しになっているような気がするけれど……でもそれは納得。身体を動かしている方が性に合っているような感じがするもの。わたしが探偵をやっている理由と同じでしょうね。わたしだって頭を動かしていないと、さび付いてしまうと分かっていたから、探偵をやっている訳だし。灰色の脳細胞がさび付いてしまったら、何の意味もないんだから」  ……えーと、その。灰色の脳細胞って、ちゃんと確認とかしたんだろうか? 一応、第四都市には学校があるからそこで学力という尺度は測ることが出来たはずだけれど、その尺度でもやっぱり天才と言われていたのだろうか。少なくとも、ある程度長い付き合いがあるけれど、そんなことは一度も耳にしたことがないぞ。初めての情報なのか? 初出しなのか? 「学校の尺度じゃ測れないわ、わたしの知能指数はね」  さいですか。  でも、それだけ言うなら逆に計測してみたくなるな……、その知能指数がどれぐらいなのか。沢山試験の方式はあるのだから、一度ぐらい受けてみれば良い。そして自分の実力はどれ程なのか、一度確認しておいた方が何かと便利ではあると思うのだけれど――。 「それはお断り、させてもらうわ。だって、試験は高いし。試験を受けるだけで数日分の生活費が吹っ飛ぶわ」 「まあ、確かに決して安いとは言い難いけれど……、でも、働いて稼いでいるお前からすれば、それぐらいお茶の子さいさいだろ?」 「そんな訳ないでしょ。わたしだってギリギリでやっているのよ。幾ら稼いでいるからって経費や税金を考えたら良くてトントンなんだから。トントンの意味、分かる? 黒字も赤字もない、収支がゼロってこと。つまり貯蓄も出来ないのよ。だから、これはあくまで自分がやりたいからやっているだけであって、もっと稼ぐ職に就きたいと思っているなら、さっさと事務所を畳んで別の仕事に就いているわよ。分かる? 楽しくなければ、仕事をやっている意味はないの。稼げればそれで良いだろ、って思うかもしれないけれど、稼ぐだけしかない人生って、割と……いや、かなり空しいものよ?」  
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