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「電子時計を持っていない……。あー、それは何か面倒臭そうね。だって、持っていないということは、政府で登録されていないってことでしょう? 登録されていないってことは、当然個人番号も持っていないでしょうから……」
「或いは、持っているけれど何らかの事情で電子時計を外された、か」
「まさか」
メアリは笑う。確かにそれはあまり考えにくいことかもしれない。
仮にそれをするとして、どうして下層街に捨てるようなことをしてしまうのだろうか?
そこまでするなら、何らかのやり方で消してしまった方が――何かと楽なような気がする。
「とにかく、これからどうするつもり?」
「先ずは彼女から情報を収集しようと思っているよ。そうしないと何も始まらないしね……。そして、そこからは君の本領発揮」
「わたしの?」
首を傾げるメアリ。
そうだよ、お前の出番だよ。
そうでなければ、何でわざわざお前をここに呼びつけたんだ。
「……友人を助けると思って手伝ってくれよ。身元不明の少女を、どうしていくべきか」
「……人捜しならぬ、情報捜しってことよね……。うーん、あんまり得意ではないのだけれど」
メアリはそこまで言って、コップに入っていた安酒を飲み干した。
「そこまで言うなら、仕方ないよね。取り敢えず話だけは聞いてみましょう」
「そうこなくっちゃ」
ぼくはそう言って、直ぐにメアリを空から落ちてきたあの少女に会わせる約束を取り付けるのだった。
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