第一章 出会い

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第一章 出会い

蔵はもともと鍵があった筈なのだが、もう錆びついていて本来の錠の役割は果たせて無かった。まだ昼間で外は痛いぐらい明るいが蔵の中には灯りなんて物はなく、とても薄暗かった。  取り敢えず家に戻りマスクや灯りなどの必要なものを揃えた。 「こんなものかな」 そして俺は蔵に戻り黙々と作業を続けた。作業と言ってもホコリを払ったり、荷物をまとめたりするだけの簡単なものだ。  お祖父ちゃんが死んでからこの蔵は使われてない。お祖父ちゃんが死んでから俺が生まれたからこの蔵には思い出の物もない。そのおかげで手が止まることはなく着々と掃除が進んでいく。  お昼になり持ってきていたおにぎりを食べる。俺は具無しのしおにぎりが一番好きだ。米のそのままの美味しさを味わえるからな。この調子で行くと今日中には終わりそうだ。 カタカタッ 蔵の奥で何かがなった音がした。なにか落ちたのかなと思い奥に進むと カタカタッ 俺は別に幽霊とか信じてないので怖くはなかったが、少し不気味だった。音の鳴ったであろうところに行くと四角い箱が落ちていた。  なんだ、やっぱり物が落ちた音だったのか カタカタッ え、何だ今。何もしてないのに箱が動いたぞ。 さすがの俺でもこれは怖い。恐る恐る箱を手に取るとまたカタカタッと動く。  吃驚した拍子に箱を落としてしまった。 ボワッ 箱の蓋が開くと辺りに怪しげな煙が立ち込める。俺が何も出来ずに唖然としていると煙の中に人影が映る。あれは人、なのか?よく見ると頭には耳が、お尻からは長い尻尾が見える。 「お主がこの箱を開けてくれたのか」
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