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出会い-2
「お主が箱を開けてくれたのか」
ヒトモドキが問いかける。腰の抜けてる俺は頭なんて働いているわけもなく、
「は、はひ」
口からは間抜けな返事が出てきた。
煙が消えていきだんだんとヒトモドキの輪郭が浮かび上がる。鮮明に見えてきたところで俺は絶句した。
耳は狐みたいに凛としていて、長い尻尾は艷やかに、それでいて顔立ちはとても気品に溢れている。いつの時代なのか綺麗な着物を身にまとっているその生き物に俺は魅了され、しばらく動けなかった。
「助かった。実はここの主と『かくれんぼ』をしていたのだが、全く見つけてもらえず数十年ここに閉じ込められていた。自分で出ようにも何かに引っかかって身動きが取れなかったところをお前が助けてくれた。ありがとう。」
俺は何も言えず互いの間に気まずい沈黙が流れる。
え、ここの主っておじいちゃん、だよな?かくれんぼ?人外相手に何してんの?!てか俺何すればいいの?!
お伽話みたいな話に俺はついていけなくなり、軽くパニックになる。しかし、改めてヒトモドキを見ると本当に華麗だ。ずっと見ていられる自信がある。
これがこいつとの出会いだった。
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