蛇の入れ物

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「驚いたか? 俺の中ではまた別の命が生きているんだ」  巨大な洞穴から吹き付ける風のような乾いた声だった。こいつは、本当にSなのか? 僕は湿った草を強く握りしめた。 「俺の身体はすでに俺だけのものではないんだ」  蟻は口だけではなく耳と鼻からも現れ、顔を黒く染めていく。 「今、この身体の中には俺のものではない命が生きている。俺の命は俺だけのものではない。だが、俺が死んだとしても蟻たちは生き続ける。それどころか、俺の身体を餌にするかもしれん」  蛇の部分の白濁した目と、Sの落ち葉の燃えかすのような目が僕を見つめている。蟻たちは無数の線となると、胸元を通り、地に降りていった。Sは頬を弛緩させ、 「西川、どうした? 顔色悪いぞ?」 「いや、なんでもない」  僕は平静を装い、歯を見せて笑い、乱れる呼吸をごまかした。 「西川、お前、なんかおかしいぞ?」 「そんなことないぞ、普通だ」 「それもそうか。お前はいつもおかしいもんな」 「そうだ、俺はおかしいんだ」 「そうだ、お前はおかしい」  Sはそう言って笑った後、地面に顔をうずめ、僅かに残っていたお菓子の残りかすをすべて食べきり、
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