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「なあ、お前、蛇と人間の境目触ってみたくないか?」
「突然なに言ってんだよ」
「言っただろ、俺はそろそろ終わるって。だったら最後に触ってみたくないか? 境目」
提案にしては有無を言わせぬ口調だった。僕は恐る恐る手を伸ばす。
前に会った時、買ってきてやったTシャツが雨と泥で湿っていて、肌にぴったりと貼りついていた。
「そうだ。着替え持ってきてくれたか?」
「ああ、持ってきたよ」
「悪いな、いつも」
「いいよ、別に。後で着替えさせてやるよ」
僕はそう言いながら、手を蛇の部分へ移動させる。凝固した水飴のような感触が指にまとわりつく。胴体を軸として、大きく開いた蛇の口を撫で回していく。
「どんな感じだ?」
「別に、想像通りの感触だ」想像なんてしていなかったくせに、僕はそう答えた。
「もっと撫でてくれよ、なんか気持ちよかったんだ」
「おい!」
「嘘だよ。そんなに慌てて手を離すこともないだろう」
Sは乾いた笑いを漏らすと、大きく欠伸をした。
「俺にはもう付いてないんだから、性的欲求なんてあるはずないだろう」
「じゃあ、最初の内はエロ本を買って来いって言っていた時にはまだ、ついていたのか?」
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