蛇の入れ物

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「まあ、そういうことになるな。でも、つかめないから意味ないけどな。あれは辛かったよ。ひたすらムラムラするだけで、どうしようもないもん。地面にこすり付けてみたけど、うまくいかなくて発狂しそうになったよ。早く、溶けてくれないかなってさ」 「抜け出そうとは思わなかったのか」 「思わないね。早く身軽にしてくれ、って思っただけだ」 「入れ物から出してくれ、ってことか?」 「そういうことだな。まあ、窮屈な身体から抜け出すために、窮屈な見た目になるなんてなんか皮肉だけどな」 「お前、狂ってるよ」 「それは俺が言う台詞だ。こんな化け物の世話を焼いているんだからな」 「死なれたら困るんだよ」 「おお、泣かせるじゃねーか。でも、俺はもう死ぬぜ」 「違うよ。生きながら蛇に飲まれる瞬間を見たいんだ。だから、お前に餓死されたら困るんだよ」  思わず、本音が出た。Sは表情を変えない。 「怒らないのか?」僕は訊ねた。 「怒る? なんで?」 「お前の死を望んでいるんだぞ」
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