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「お前は本当に人の話を聞かないな。俺は死に向かっているのに、生きがいを感じているんだぞ。だからむしろ俺はお前に感謝しているくらいなんだ。死ぬことを望んでくれているんだからな。もし変な正義感とか出して、助け出そうとか、説得しようとかしてたら間違いなくお前を絞め殺していたね」
言い終えた瞬間、蛇の目がぎょろり、と動いた。
Sの身体が飲み込まれていく。僕は思わず手を伸ばしかけたが、無意味に腰を浮かせただけに終わった。
「なんだ、今さら助けようってのか?」
蛇はその身を後ろへ大きく逸らし、勢いよくうねりながら、僕にその顔を近づけてきた。既にSの身体は顔以外すべて飲み込まれている。突然のことに後ろへ大きく転倒した。
「違う。そんなにさっさと死なないでくれって思ったからだよ」
「まあ、どうでもいいけどな。余計なことはするな」
言ったと同時にSの顔が飲み込まれ、蛇の口は閉じられた。もう僕の声は聞こえないし、理解してくれないだろう。一応「なあ、S」と声をかけてみたが無反応だった。
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