0人が本棚に入れています
本棚に追加
満腹になった蛇はその場に寝そべり、微動だにしない。その身には、Sの身体の後が烙印のように残っている。僕はそれを二、三度撫でた後、起き上がり、この場を去った。
僕にとってSは生きがいだった。
僕にとって人の死を見るということは生きる意味だった。
だからSが死んだ時点で、僕の人生は終わったのだ。
僕は目を覚ました。ふと鼻先に目をやると、ほくろが動いているのかと思ったが、それは蟻だった。
こそばゆいが、今の自分にはそれを搔くことはできない。もうしばらくの辛抱だ、と言い聞かせ、腹を撫でる。
「おはよう」
蛇は挨拶を返す代わりに、眠たそうな目をチラリと僕に合わせた。
最初のコメントを投稿しよう!