The love is instinct 18

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The love is instinct 18

 摂津子が素知らぬ顔で淳弥の足を蹴飛ばした。淳弥は眉をしかめて彼女を見る。摂津子の言いたいことは解る。イチャつく十玖と美空の姿を見て、自分たちの置かれている状況との違いを、感じずにはいられないのだろう。それは淳弥だって同じだ。  視聴者が俳優に自己投影し、虚像に恋をする。その対象に現実(リアル)はいらない。  けれど、淳弥たちだって血の通った人間だ。恋だってするし、その先だって望みもする。  ぶすっくれた淳弥が、佐々木を睨んだ。 「何だよ淳弥」 「うちのマネージャーは、融通が利かないなあと思ってさ」 「何言ってる。今回も淳弥の我が儘通してやったろ。“edge”の二人巻き込んで」 「いえいえ。うちのもいい勉強になったみたいですし」 「そうですよ」  報告を逐一聞いていた“edge”のマネージャー二人が、淳弥をフォローする。 「俺らは面白かったし。なあ悠馬」 「ケー番交換したし、ライン仲間になったし。淳弥の思いつきのお陰だよな」 「実態は、ケンカ売っといて、あたしから逃げるためだったけどね」  摂津子の一言に静寂が下りる。  子供の頃から共演が多かった二人を知らないものはここに居ないが、本当の関係を知っている者は僅かだ。 「せ…摂津子ちゃん……!?」  慌てる佐々木。目で『余計な事を言うんじゃねえ』と訴える彼を「阿保らしい」と摂津子は一蹴し、 「十玖はとっくに知ってるわよ」 「そりゃ彼は身内だから、淳弥の不利になるようなこと言わないし」  名前を呼ばれて、そろそろと更衣室から出て来る十玖に視線が集まる。十玖は一瞬怯えた顔をし、関わらないように目を逸らして、ドレッサーの前に腰掛けた。  鏡に映り込んだ顔を見ないように、目を閉じて深呼吸する。 「十玖?」  同じく更衣室から出て来た竜助が、彼の肩を叩く。 「僕から言う事は何もありませんよ」  耳を塞いでシャットアウトする十玖から、今度は渦中の淳弥に視線が移る。 「どうせ巷で噂されてるまんまなだけじゃん。知ったって『やっぱりね』で終わりだよ」 「そう言う問題じゃない! もっと自覚を持て」 「自覚持ってるから、黙って来たじゃんか。仲の良い奴らにまで隠してさ! 四年もッ!」  言い様、淳弥は摂津子の肩を抱くとすかさず。 「僕たち付き合ってまーす」 「まーす」  いきなり交際宣言されて、一同は茫然と二人を見詰めた。  佐々木はガックリとうな垂れて重い溜息を漏らし、「もお勝手にしろ」と呟く。 「勝手にしろって事なんで勝手にしまーす」 「しまーす」 「言質を取るな」  淳弥の突然の反発に、マネージャー同士が慰め合ってるのを見ながら、晴日が口を開く。 「十玖って何気にスクープネタ持ってるよな」 「吐かねえけどな」  竜助が十玖の肩に肘を付き、鏡越しから十玖の目を見る。彼はすっと目を逸らした。  美空は十玖と竜助にお茶を持って行き、そのまま十玖の足に腰掛ける。十玖は彼女の腰に腕を回し、ペットボトルの蓋を開けた。 「十玖と摂津は高本ネタの殆ど知ってるよね? 僕が情報元だし」  暴露してすっきりした淳弥が、「ねえ~」と摂津子に笑いかける。十玖はげんなりとした。 「こっちに振らないでくれる?」 「SERIネタも? カッコいいよね彼女」  拓海が目を輝かせて、十玖を見る。 「せっちゃんネタは口が裂けても言えないから」  十玖と淳弥は同時に萌を見た。淳弥が口を開く。 「そこにせっちゃんの間者がいるからね」  淳弥の視線を受けて、「萌?」と自分を指した。 「せっちゃんは数少ない女の子の従姉妹だも。唯一とーくちゃんの上をいく人に嫌われたくなーい」 「女性という事を差し引いても、僕もせっちゃんには色んな意味で勝てる気しないから、首突っ込みたくない」 「猛獣使いが付いてるしね」  淳弥がいうところの“猛獣使い”を思い浮かべて、十玖と淳弥が苦い顔をする。
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