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もう、大丈夫だ。落ち着け。覚悟を決めろ。
息を整えると俺は目の前の柵に足を掛けた。手を置き力を込める。目的地だけを見ればいい。一点集中だ。
躊躇ったら死ぬ。やはり、これは覚悟を問う問題。命の限り家族を守る覚悟。もう迷わない。ただ、真っ直ぐに……飛ぶ。
『やっぱりスゴイね、纏井くんは。最後まで諦めない姿勢に感心するよ。君なら立派な父親になれるんだろうなぁ』
芦屋さんの言葉が背中を押してくれた。こんな俺を信じてくれた。体が宙を舞った。生きる為に、死をも覚悟する。いや、乗り越える。一瞬がこんなにも永く感じる。
足先がしっかりと着地点を捉えた。るるちゃんのいる秤の上に飛び移る事に成功した。怖かったのかるるちゃんは俺にしがみついてきた。
「もう、大丈夫だよ」
まるで自分に言い聞かせてるみたいだった。
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