儚い恋の願い一つだけ叶えておくれ

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 私は占い師をしている。占い専門のお店で私だけのスペースを空けてもらってそこでお客さんを待っていて、実力も有って随分と人気になっている。私の占いは本物で当たらない事も時にはあるけれど、そこら辺のエセ占い師と一緒にしてもらいたくない。  そんな私だけど、占いだけが仕事と言う訳でもなく、古いヨーロッパの魔術なんかもかなり勉強していて、ネットでおまじないや怖い所では呪いなんかを受けて居たりするが、こっちもかなりの高収入となっている。  しかしそんな私には秘密が有って、普段は西洋呪術系の占い師をしているのだが、事自分のお願いをする時はどうしても日本古来の神社に参ってしまうのだった。  神社に着くと作法を守りながらお参りをして願う時に「かんながらたまちはえませ!」と必死になって願っている。  これは恋の願い。真剣にならざるを得ない。 「今日も真剣だなー」  そんな風に言ったのはこの神社の若い神主さんだが、私と近所で同い年なのだからずっと昔っから知っている奴だった。 「うるさい。気が散る!」 「まあ、そう言うなよ。お前の声が聞こえたからジュース持ってきたのに」  そう言われたので私は馬鹿なのかもしれないがパッと表情を変えた。そして彼と二人で神社の横の縁側に座る。  高台になっている神社なのでその縁側からは街が結構良い景色で見えていた。  思えばかなり昔から私は彼とこんな事をしている。小さい頃からずっと遊んだり、折々のお参りをしたり、散歩なんかでこの神社を訪れると彼はいつもお菓子とかを持って現れるのだ。  そんな優しさに恋心が生まれたのは簡単な事だった。  私は彼に恋をしている。もうかなり古い付き合いなのにこの恋に気が付いたのは数年前、彼がこの神社の神主として修業から戻った時だった。  それまでは頼りない弱虫の弟くらいにしか思ってなかったのに、その時、私も大学から就職して普通の仕事に疲れ実家に戻り落ちぶれていた時に、彼の情けなさが優しさだと解った時に私はずっと彼の事が好きだったんだと思ってしまった。  本当に都合の良い話である。  彼とは今日もそして多分これからも仲良く居られると思う。それはあたしが占いの仕事の休みの度にこの神社の神様にお願いをしているから。  そうさっきの真剣なお願いも彼との事を願っていたんだ。  彼とはとりとめのない会話を一時間程してあたしは家に帰った。そして自分の部屋に入るとベッドに飛び込んで枕をギュッと捕まえる。 「なんで、あたしはこんなに願いが叶わないんだ!」  枕に顔を沈めて声を殺して叫んでいた。  彼の神社は恋結びで有名。そんな所には幸せになった人間のお礼参りの品々が並んでいる。もちろんそこには仲睦まじそうなカップルの写真が有ったりする。それなのにもう三年もお願いしている私の願いは叶わない。  彼とは幼馴染。それ以上の関係にはならなかった。  でも、確かにそれ以下の関係にもなってないので私の「いつまでも仲良く」と言う願いは通じてるのかもしれない。  そんな風に思っているから、次の休みも神社に通ってしまうのだろう。  いつまでも彼との事をくさくさと考えていても仕方がない。こんな時は仕事をしようと、パソコンを開いて魔術の方の依頼を確認しようと思った。  結構な依頼が有った。  私の魔術は恋に対して結構SNSで評判になっているらしく、そんなにお安い値段設定にしてないのに今日も三つの依頼が有る。  自分の収入になるのでこれは有り難い事なのだが、なんか今の気分では恨めしくもなってしまうが、そんな調子ではダメだ。  私は自分の頬を両手で叩いて、仕事をしようと思った。  今回の依頼は呪いじゃなくて縁結びだったので白魔術になる。今回はパワーストーンと惑星護符が売れた。けれど、私は有りものをそのまんま売りつけたりはしない。ちゃんと魔術に則ってそこに各パワーを授ける様にする。  石には魔法陣を使って、そして護符はちゃんとその人様に作成する。もちろんそれからキャンドルを灯して呪文を唱えての念を封じ込める。これでやっと私の商品になるので結構手間も掛かっている。  正直、休みの日は良いのだが、仕事から帰って注文が殺到していたらそれは気分が落ち込みそうな所も有る。  それから商品の発送準備をして実際の発送は明日、占いの仕事に向かう時にするとして、私の仕事が終わってのんびりとする。魔法陣やキャンドルを片付けてしまうと私の部屋は占い師っぽくない。神社の護符が有ったり小さな神棚も用意していて、その他は殺風景。信じている宗教と自分の仕事が有ってない。  次の日仕事が終わってふと見上げたそこはあの神社の鳥居が有った。 「儲けてるのか?」  私がボーっとそんな風に見上げていると彼が姿を現した。どうやら参道の周りを掃除していた様子で箒を持っている。こんな偶然の出会いが有るから神社にお参りするのが辞められない。次はお礼を言っておこう。  もちろん彼は私の副業の事を雑談の時に聞いて知っている。 「まあ、それなりに…」 「しかし、人の幸せなんて願ってないで自分の恋愛を魔術でどうかしたらどうなんだよ。もう30で独身だと魔術の効果も疑われるぞ」 「そんなんお互いさまでしょ。縁結びの神社の神主が独身なんだから」  私達はお互いこんな仕事なのに独身、恋人無しの事をお互いに知っている。だから暫くの間、お互いに黙り込んでしまった。 『あのさ…』  そして気まずい空気になった時に私が軽く「だったら付き合う?」って冗談交じりに言おうと思った時に彼と言葉が合ってしまった。こんな時にシンクロしなくても良いのにと思うが、それも嬉しかったりもする。  今、言葉がぶつかったのでまたお互いに黙ってしまったが、その時に彼がため息を吐いた。 「じゃあ、俺が恋愛成就の護符作ってやろうか?」 「えー、お父さんの持ってるよ」  もちろん私の部屋に飾られているのはこの神社の先代神主の彼の父の作品だった。しかし彼の父は去年病で無くなってしまっていた。 「なんだ、うちの護符は人気だったから復活させようと頑張って練習してやっと販売しようと思って、その第一号をお前に進呈しようと思ったのにな」  それはちょっと、ではなくかなり欲しい。この神社の第一号なのも嬉しいが、それは彼の第一号と言う事になる。そんなのは護符の効果どころかコレクションとして私は保管したかった。 「まあ、練習台になってやらんでもない」 「素直に縁結びに困ってるって言えよ」 「うっさいわ! じゃあ頼んだからね!」  どさくさに紛れて私は彼に注文していたが、そんな彼は笑っていた。もうそんな事が照れ臭くて、でも彼と話せる事が嬉しくて、彼の笑顔が見れた事が幸せでしょうがなかった。   彼が私の為に護符を作ってくれていると言うそんな楽しみは夜が明けても続いて次の日、こんな心境の時には占いの力が上がる。もうそれはバリバリに映像の様に占い相手の運命が見えてしまうくらいだ。  そんな風に占いの仕事をこなしていると、予約をしてなかった人が私に占ってほしいとスタッフから言われた。普段は断っているのだが、今日は気分も良いし予約は途切れているので快く快諾した。  そして入って来たのはビックリな人間だった。 「ヤッホー!」  それは彼でもちろん私がこの占いの仕事をしているのを知っていたので現れたのだろうが、彼が来るなんて思っても居なかった。 「ちょっと、冷やかし?」 「うん? 占ってもらおうと…」 「そんなの、必要だったらタダで占ってあげるのに」  彼には時々「占おうか?」なんて聞いているけれど、それはいつだって断られていたので、西洋占いなんて信じてないのだろうと思っていた。 「プロなんだから金払わないとな…」  彼がニコッとして返してくれたが、その言葉さえも嬉しかった。 「それで? なにを占ってほしいの?」 「ズバリ! 恋愛運を!」  こんなにハッキリと言うお客さんはそんなに居ない。誰もが恋愛に関しての時はちょっと照れてしまう事が多いのに。それも男の人は私にも照れてしまって回りくどく言う人が殆どなのに、彼に限っては私が幼馴染だからと言う事が有るからなのか隣の占いスペースにも聞こえそうなほどに言っていた。 「それって自分でわかんないの?」 「俺は占い師じゃなくて神主だから」 「神に仕えるものが他の国の占い信じるの?」 「俺って自分とこの神様よりも西洋の神様を信頼してるから。ゴチャゴチャ言わないで占えよ」 「罰当たりめ! じゃあ手を見せて」  若干文句の言い合いになりながらも彼は私の言う事に従って両方の手のひらを表にして差し出していた。  一応占いは魔術と違って西洋だけでは無くて様々な物を勉強している。確かにタロットなんかよりも自信は無いが、相手は彼なので練習台にはなるだろうと思っていた。そして自分との相性も知りたい。もちろん生年月日による占いなんて腐る程自分で観ていた。  手相は基本的に運命線を見る。そしてそれから姓名判断や得意のタロットなんかも駆使した。  結果はどれも一緒だった。  彼の結婚はもう近くて相手も確定している。共通の趣味と仕事上での付き合いのある人で、彼の方が相手に惚れていると言う私の占い。  今日は調子が良いのでかなり自信が有るのだが、そうなるとこの相手の人物像が自分とは離れている気がしていた。 「ちょっと、占いってこんなに静かになるもんなの?」  私はずっと真剣に観ていたので普通だったらトークも織り交ぜるのにそれを忘れてしまっていた。  彼の言葉にやっと我に返ってふと顔を挙げる。そこには愛しい人の顔が有った。  でも今は冷たくあしらいたい。 「おめでとっ来年くらいには結婚してる。お前の好きな人と」  そう彼は私の事なんてどうとも思ってないのだろうからこれは自分じゃないと思っていた。私の観た限り彼の運命の人はかなり素敵な人で私なんかとは違う。そして出会いすらもっとロマンチックで腐れ縁の私とは大分違う。それが悔しくて彼に簡単に笑いかける事が出来なかった。 「めでたく思ってるんならもっとにこやかにしろよ」 「わー、良かったねー、おめでとー」  抑揚もない言葉をそこには並べた。 「まあ、良いか。それで、これは今朝の注文の品だ」  そう言うと彼は一通の封筒をテーブルに置いた。 「ちゃんと真剣に縁結びの文言にしといたからな!」  ちょっと彼は不貞腐れた様な顔になっていた。恐らくは私の態度が気に入らなかったのだろう。それで彼は帰ってしまって私は涙を流した。  彼の占いなんて観なければ良かった。自分で自分を占えないけれど、運命じゃないことは分ってしまった。その事が哀しくて涙が浮かんでしまう。  彼が残した護符を開けて見てみる。  そこには綺麗な花柄の和紙に先代と同じだけど、もっと優しい文字で護符が描かれていた。それがとても綺麗なのに今は涙で歪んでしまっていた。  その日の帰り道彼の神社の横を通る。今朝のお礼もしたいけれど、今は彼に会いたく無くて振り向いた顔を正面に直して歩き始めた。 「暇なら寄っていかないか?」  こんな時に一番聞きたくて聞きたくない声が聞こえた。今の私は泣いてしまいそうだから。そうそれは彼だった。 「今日は良い占いをしてもらったからちょっと言いたい事が有って…」  彼はそんな風に言っているのだが、私は振り返りもしないで、 「そんな事をしてる暇が有るんだったら運命の人に告白したら!」  そう言って私はスタスタと歩き始めた。  すると腕を掴まれた。彼だと解っている。それでも振りほどこうと腕を振る。  その時に私が泣いている事に彼が気が付いた。 「なんで泣いてるんだよ…」 「お前が悪い! バーカ!」  彼が優しく心配してくれているのに私はこんな風にしか返せなくって、彼の手を振りほどいて走った。  自分の運命を見てしまった気分で悲しくて苦しくて情けない。信じたくないと思いながらも私の占いは当たってしまうのだと悲しくなった。そんな思いを原動力にして走った。  でも、彼はずっと追いかけてくる。こんな私を追って走っている。 「待てよ! 話させろよ!」 「聞きたくない! アホー!」  子供の様な追いかけっこをして商店街を進むとそのあたりは昔っからの私たちの遊び場なので誰もが笑っていた。  それからも私は彼の事を罵倒しながら走って幹線道路を横断して自分の家の方へ進む。信号が点滅していたから彼はもうここで追いかけてこなくなるだろう。  そう思って歩速を緩めた時だった交差点の角から急にヘッドライトが光って私を照らしている。  信号が変わると思って急いだ車が右折しようとしていたのだ。相手の車からは街路樹が邪魔をして私の事を見付けるのに時間が掛かった様でブレーキを踏んでいるのだろうが明らかに間に合わない速度で私に近付いていた。  もう私の目の前に車は有って、逃げられそうにもない。こんな事になるのに自分の運命が解らないなんて占い師は損だ。今日は一日の始まりが良かったのにこんなに最悪の日になってしまう。本当についてない。  そんな風に思った時だった。近付くヘッドライトとを遮るものが現れた。  それは彼だった。  彼は私を追いかけるのを辞めないでいて、自分も危ないのに私と車との間に入って、私の事を抱きかかえる様にしていた。  それからの一瞬の事を私は憶えてなかった。  気が付くと私は彼の腕に包まれて道端に倒れていた。 「馬鹿…危ないだろ、」  弱々しい彼の言葉に気が付いて、起き上がると自分は怪我どころか痛い所も無かった。それなのに彼は今の言葉を残して目を瞑ってぐったりとしてしまっている。 「ちょっと、今、その冗談はたちが悪いよ」  私が心配しながらぐったりとしている彼の頭を持ち上げようとした時に手に暖かい感触が有った。自分の膝に彼の頭を置いて自分の手を見ると暗くて真っ黒になっていたが、私はそれが彼の血なんだと直ぐに解って、その瞬間にワンワンと涙が溢れてしまった。  こんな事になるのだったら運命なんて関係なく素直に彼に告白しておけば良かった。それが悔しくて彼が倒れているのが悲しくて、私がこんな事を招いてしまったのだと妬ましくて泣いていた。  それから彼は病院に運ばれ緊急処置を受けていたが、私はじっと待っている事が出来なくて彼のお母さんが病院に到着した時に、なにも言わずに病院を離れた。  急いで家に帰って部屋に置いてあった一つの缶を持ってまた直ぐに家を離れた。そんな事なので家族がどうしたのか心配していたが、そんな事にも気を止めずに私は彼の神社へと向かった。  一度身を清める気味で御手水で手と口をゆすいぐ、そして百度石の方に向かった。そこに持ってきた感を置いて開く。そこには五円玉がきっかり百枚入っていた。  それは縁が有ったら一度百度参りをしようと自分で用意していたものだ。それを今、彼の為に実行するときが来たと思った。  はだしになって五円玉を一枚持って社の方へ向かう。いつもの様にお参りの作法を守ると、 「彼の事を守ってください!」  とこれまでは自分の恋の事ばかりをお願いしていた私だったのに彼の事をお願いする。  それからも百度石に戻って同じ事を繰り返す。  誰も居ない神社で私だけが延々とお参りを繰り返していた。  今日はずっと曇っていて寒かったがお参りを始めた頃に落ち始めた雨粒は三十回も越える頃になるとしっかりとした冬の雨になってしまった。  それでも私の心は折れなかった。彼を救いたい一心で歩みを進める。  もう残りは十回になったけれどその時には私は雨に降られてびっしょりになって寒さで震えが止まらなくなっていた。  でも、足を止める事は無く歩いた。  残りが一回になった時に一度心を整える為に深呼吸をした。もう呼吸でさえ寒さで震え当たる霙の一粒一粒が痛く思えて、足は血が滲んでいるけれど、もう痛さは無い。  歩くのが辛くなったのが分ってしまったがもう一回なので歩こうと足を進めた時にずっと私だけだった神社に人が現れた。時間はもう深夜なので私も気になって振り返るとそこには彼の心配した時の表情が有った。  でも、それは彼では無かった。その彼と良く似た眼差しは彼のお母さんで私も良く知っているおばちゃんだった。おばちゃんは私に気が付くと慌て近寄って、 「まさか、お百度参りしてたの? あんな子の為に?」  おばちゃんは私が百度石の所に居たのでそんな予想をして心配をしてくれて、申し訳なさそうに言うと肩に手を置いた。 「こんなに冷たくなって! 風邪ひいちゃうでしょ! 今お風呂沸かすから!」 「大丈夫です。もうあと一回で終わりますから…」  そう言うと私は百回目のお参りを始めた。もう身体の彼方此方が居たくて寒い。柏手を打つと手が痺れそうにもなる。それでも彼の事を想った。 「神様お願いします!」  私のお百度参りを見届けておばちゃんが連行する様に家に連れ込まれた。バスタオルを掛けられお風呂が沸くのをストーブの前で待つ私におばちゃんが、 「お参りの効果が有ったんだろうね。あの子は頭を五針縫ったくらいで怪我は大した事ないのよ」  そんな話を聞いて私はポカンとしてしまった。 「だってあいつ、気を失って…」  そうそれはもう今わの際に居るような言葉を残していた。 「それがね。昨日護符を作るのに徹夜したんだって。誰に頼まれたのか知らないけれど、真剣だったみたいよ。それで眠たくって今は病院で大イビキよ」  そうおばちゃんはクスクスと笑っていた。その護符は私の元にあるけれど、ちょっと肩透かしをくらった私は急に悪寒がして「ハックション」とくしゃみをした。  それから彼の家でゆっくりと暖まってから急いで病院に向かう事も無く。家でぐっすりと眠った私はあくる日にやっと病院を訪れる。  ちょっと昨日の雨に当てられて鼻水が止まらない。  おばちゃんに彼の病室を案内されるとそこでは頭に包帯を巻いてケロッとしている彼が居た。 「馬鹿!」  私の彼に対する第一声だった。 「命の恩人になんて言い草だ!」 「だって心配したんだもん!」 「そうよ。ウチの神社でお百度さんもしてくれたんだから!」  すると一番怒っていたのはおばちゃんだった。それからおばちゃんは私達の事を見て「ちょっと買い物」と言って病室を離れてしまった。 「悪かった、心配させて」 「ホントーだよー」  文句の一つでも言いたかったが、私はそう言うと彼に泣きついてしまった。 「お前が死んだらどうしようって思ったんだから!」 「だからゴメンって。でも、お前も危なかったんだから」  私も彼もお前お前と言っているので誰が誰なのか解らなくなる。けれどそんな身近差が嬉しかった。  なのでこの機会に私は秘めていた想いをもう明らかにするつもりだった。 「あたしはお前の事が好きなんだから! 死んだら困る!」  どうも喧嘩腰にしか言えなかった。 「えっ?」  すると彼はあほみたいな顔をしていた。そんな事を予想してなかったのだろう。私は玉砕覚悟で言っているのだからもうどうなっても良い。 「占いなんて信じない。あたしは好き! 運命じゃなくてもこの想いは伝えたい!」  すると彼は困った顔をしていた。多分私の告白をフル為の言葉を探しているのだろう。  かなり困ってから彼は頬を膨らませた。 「それ…」  彼の言葉が聞こえないくらいに私の鼓動が耳に響いていたけれど今は聞くしかない。 「俺から言いたかったのに」 「へっ?」  私は彼の言葉の意味が解らなくてそう言ったが「クシュンッ」と私はくしゃみをしてしまって、二人で笑い始めた。 「あほや」  彼がそんな風に言うけれど私は鼻水を啜って笑った。嬉しい事が起きた。これは神様からのプレゼントなのだろうか。  占いの通りに私達は一年後に結婚した。まだ私は神社の神様が好きだが彼は西洋宗教が好きで二人でそんな言い合いをしている。楽しいのはもう私だけの事なんかでは無い。 おわり
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