王子の覚悟

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それからの王子は自分の執務室にセリーナのベッドを入れて、セリーナと片時も離れようとしなかったし、陽気のいい日にはセリーナを抱いて、庭に出ることもあった。 その異常ともいえる溺愛に、あきれる者もあったが、目を覚まさぬセリーナへの純愛に心をうたれる者がほとんどだった。 季節は廻り、春になってもセリーナは目を覚まさなかった。セリーナは眠っている間に17歳になっていた。 王は初夏の王子の24歳の生誕祭に、セリーナを王子の婚約者として公表するつもりなのに、セリーナが目を覚まさないことに焦っていた。 これもわたしのあの出来事への報いなのだろうか? と王は心を痛めていた。 王妃の死、王子のトカゲのような顔だけでなく、王子の愛するものまで奪おうと言うのか……。しかし、セリーナは……。 王は毎日祈るのだった。 「罰は我に賜えよ。もう大切な人をわたしから奪わないでくれ」
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