春の風

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「え?セリーナ?」 「おうじ…さま?」 セリーナの声は少しかすれていたが、紛れもなくセリーナの声だった。 「セリーナ!」 「はい」 「セリーナ!」 「はい」 「セリーナー!」 王子は返事が返ってくるのが嬉しくて何度もセリーナの名を呼び、ついには絶叫してしまった。 離れたところから王子の護衛をしていたニールが、王子の絶叫に驚き、すぐに駆け寄ってきた。 「王子、どうなさいました?先ほどのつむじ風で何かありましたでしょうか?」 ニールは王子の前に右膝をついて控える。 「兄様」 ニールは空耳が聞こえた。 セリーナの声を聞くのなんてもう何度目だろうか?王子と変わらないくらい、セリーナが目を覚ます妄想は何度もしている。またこうして「兄様」と呼ばれる日を夢見ているニール。 「兄様」 また空耳が聞こえたようで、ニールはあまりの重症ぶりに自分でも驚く。
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