春の風

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「あの夜、王子とあの女性が何もなかったのは信じます。思い返すと、確かに王子は積極的な感じではなかったように思います。でも宴の席でずっとあの女性をそばに置いたと言うことは、王子はその女性を少なからず、良く思ってらしたのですね」 セリーナは立ち上がり、バルコニーの手すりまで歩く。 「そんなことはない!確かに私のようなものを気味悪がらずに側にいた女は珍しく、うれしくなかったとは言わない。けれどよく思っていたなどと言うことはない。あの宴の間、ずっと床に伏していたセリーナことを考えていたんだ。本当だ、信じてくれ」 王子も立ち上がり、セリーナの肩に手をかける。 「とても綺麗な方でした。色気のある方でした。私なんかよりきっと…」 「セリーナ!信じてほしい。あの夜、いくら眠り薬を飲まされて意識がなかったとしても、君を悲しませるようなことをしたことは最悪な失態だと反省している。けれど、誓って君を裏切るようなことはしていないし、気持ちが揺らいだこともない。僕は君を愛してる」 「え?」 王子はセリーナを後ろから抱き締めた。
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