春の風

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「ずいぶん前に自分の気持ちには気付いていたけれど、自信がなかった。僕のような不気味な容姿の男が君を幸せにできるだろうかと。けれど、どうしても伝えたくて、あの雨の式典の後、君に告げようと思っていたんだ。セリーナ、僕は君を心から愛している」 「王子様…」 セリーナは振り向き、王子と向かい合う。 私も王子様を好きなことに気付いたの、あの時。 王子があの女の人に盗られるのは嫌だと思ったんだ。 だから王子の部屋に戻ろうとしたとき……。 セリーナは唐突に思い出した。 部屋に戻ろうとしたとき、男たちに麻袋にいれられたことを…。 王子は突然震えだしたセリーナに驚き、セリーナの顔を覗き込むと真っ青な顔をしていた。 「大丈夫か?セリーナ」 「私、麻袋にいれられて、気が付いたら倉庫みたいなところで…男たちが…」 「思い出さなくていい。忘れろ」 王子はセリーナの言葉を遮って抱きしめた。
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