春の風

8/15
前へ
/306ページ
次へ
「大丈夫だ、セリーナ。未遂だった。セリーナは何もされていない。あんなことは忘れろ」 王子はセリーナを強く抱きしめた。 「私、怖くて、怖くて…」 「もう何も言わなくていい。忘れるんだ。もう二度とあんな目には遭わせない。セリーナは一生僕が守るから、あんなことは忘れるんだ」 王子はセリーナの頭を優しくなでる。 「でも覚えてないんです。『助けて』と強く願ったとき、何か大きな力が落ちてきて…」 「竜巻のようなものが発生したんだ。そのおかげで助かった。すまない。すぐに僕が見つけられなくて。でもその竜巻のおかげでセリーナの居場所もわかったし、助かった。天が君を守ってくれたんだよ」 王子の言葉にセリーナは体をピクリとさせた。 「セリーナ、どうした?」 「いえ、何でもありません」 セリーナは一層元気がなくなったような気がして、王子はとても嫌なことを思い出させたと悔やむ。
/306ページ

最初のコメントを投稿しよう!

91人が本棚に入れています
本棚に追加