春の風

14/15
90人が本棚に入れています
本棚に追加
/306ページ
全く起きないセリーナに根気よく話しかけたり、散歩に抱いて連れ出したり、大切にしてくれていたとニールは言っていた。 もうこのまま起きないかもしれないと、誰もが諦めそうになっていたけれど、王子だけはセリーナが目を覚ますことを信じていて、今セリーナが着ているドレスも結納の儀に着るドレスも作り、結婚の儀のドレスも既に制作していると言っていた。 「ありがとうございます、王子。恥ずかしいけど、嬉しいです」 「わたしの方こそありがとう、だよ。起きてくれて、あんな失態をしたわたしを許してくれて、プロポーズを受けてくれて、キスまでしてくれた。ありがとうと何万回言っても足りないよ。絶対にもう辛い思いはさせない。君を守る。幸せにするよ」 王子が優しく微笑むから、セリーナは目を閉じて王子のキスを受けた。 「これは誓いのキスだ。天に誓う。セリーナを我が妻にし、一生幸せに添い遂げるぞ」 王子は浮かれていた。愛するセリーナが目覚めて自分を受け入れてくれたから。 これから訪れる過酷な試練を思いもせずに……。
/306ページ

最初のコメントを投稿しよう!