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全く起きないセリーナに根気よく話しかけたり、散歩に抱いて連れ出したり、大切にしてくれていたとニールは言っていた。
もうこのまま起きないかもしれないと、誰もが諦めそうになっていたけれど、王子だけはセリーナが目を覚ますことを信じていて、今セリーナが着ているドレスも結納の儀に着るドレスも作り、結婚の儀のドレスも既に制作していると言っていた。
「ありがとうございます、王子。恥ずかしいけど、嬉しいです」
「わたしの方こそありがとう、だよ。起きてくれて、あんな失態をしたわたしを許してくれて、プロポーズを受けてくれて、キスまでしてくれた。ありがとうと何万回言っても足りないよ。絶対にもう辛い思いはさせない。君を守る。幸せにするよ」
王子が優しく微笑むから、セリーナは目を閉じて王子のキスを受けた。
「これは誓いのキスだ。天に誓う。セリーナを我が妻にし、一生幸せに添い遂げるぞ」
王子は浮かれていた。愛するセリーナが目覚めて自分を受け入れてくれたから。
これから訪れる過酷な試練を思いもせずに……。
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