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「さぁ、もう遅くなったね。休もうか」
と王子はセリーナを抱き上げ、歩き出した。
「王子、私はもう歩けますけど」
セリーナが言って「そうだったね」と王子はセリーナを下ろした。
「でも大丈夫かい?」
「歩かないと体力は戻らないと兄様も言っていたでしょう?大丈夫です」
「でも、こんな手で悪いが……手は握っていいかな?」
「好きな人の手です。私も握りたいですよ」
セリーナは自分で言って、なんて恥ずかしいことを言っなと思ったけれど、隣の王子の方がもっと恥ずかしそうにしていた。
「そういうの、嬉しいけど恥ずかしいんだな。先程のセリーナの気持ちがわかったよ」
王子がポツリというから、セリーナはおかしくて大きな声で笑った。
その笑い声を聞いて、王宮の使用人たちは温かな気持ちになっていた。セリーナの鈴の音のような笑い声は、アピネ王国に幸せな風を運んできたようだった。
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