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それからしばらくして、真央が抱きしめていた腕を離した。
「蒼夜、上がってくでしょ? もうこんな時間だし今日はうちに泊まっていきなよ」
まだ目は腫れていて、涙のあとも少し残っている真央だけど、笑った顔はいつも通り優しくて可愛かった。
「うん、じゃあ今日は泊まらせてもらおうかな」
こっちも笑顔で答えると、なぜか真央が「はぁ…」とため息をついた。
え、俺なんか変なこと言ったか?
「あのさ、蒼夜」
「なん……っ!?」
急に肩を掴まれて、壁に体ごと押し付けられた。目の前に真央の顔があって、思わず顔が赤くなる。
「な、に…」
「僕達、両思いになったでいいんだよね?」
「う、うん…」
両思い、でいいんだよな。そう考えると少し恥ずかしいけど、それがどうしたんだろう。不思議に思って首を傾げると、真央はふっと表情を和らげた。
「じゃあ、蒼夜のこといつ襲っても大丈夫だよね」
「……は?」
聞きなれない単語に思考が停止した。
襲……襲うってなんだ…?
「真央、ちょっと意味が……って、まお!?」
「んー?」
「ちょ、近い…!」
もともと近かったのにさらにその距離が縮まって頭が混乱する。これ、もうほぼ隙間ないじゃん。
「ねえ真央ってば……ひゃ!?」
今度はいきなり耳をぱくっと食べられて、もう何が何だかわからなくなってきた。それから舌で軽く舐められ、少し体がふるえた。
「ま、お…? ん、やめっ、くすぐったいって…っ」
「ふふ、ほんと耳弱いよね」
「ひっ、そこで喋んな…!」
耳が弱い自覚はあるけど、こんなことされるなんて微塵も思ってなかった。
そこで真央が俺からやっと離れ、少しだけ距離をとる。触られた左耳がジンジンしてあつい。
「真央…?」
「僕は、本当にずっと前から蒼夜のこと好きだったんだよ」
「へ?」
「だからもう我慢できない。触りたいし、もっと色々なことしたいって思ってる。」
やけに真剣な顔で言ってくる真央を見て、また顔が熱くなってきた。
色々なこと……って、少しだけ想像がついた。
「だから、あんまり迂闊に泊まるとかこれからは言わない方がいいよ。何するかわからないから」
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