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外が見える席に陣取ると鞄からスマホを出し写真を呼び出す。
ゆっくりと画面を繰り沢山の写真を眺めた。
あぁこの時の宗は大好きな苺食べてご満悦だったんだっけ。
それからこっちは海に行った時でビーチバレーしてすげー楽しかったな。
それからそれから―――。
「うわーそんな小さい頃から二人は仲良しだったんだねー」
マスターだった。
俺の前にコーヒーとサービスと言ってクッキーを置いてくれた。
「ありがとうございます」
「いえいえ。二人ともかわいいねー」
スマホの中の俺たちの記録を微笑ましそうに見る。
「―――でも、最近の物はないんです…」
「んー、どうしてって聞いても?」
「宗が嫌がっちゃって。撮らせてくれなくなりました」
「そう……」
マスターは、励ますようにぽんぽんと軽く頭を撫でるように触れた。
そして耳元に口を寄せ「僕は実は魔法使いなんだよ」と囁いた。
「え?」
驚く俺にマスターは口の前で人差し指を立てて見せて「しー、内緒だよ」とウインクした。
こくりと頷く。
「キミに魔法をかけてあげる。元気が出る魔法」
そう言うとマスターの指からキラキラと光る線が指の動きにあわせていくつもいくつも走る。やがてそれはコーヒーカップの中へ消えていき、ティースプーンでかき混ぜると改めて「さぁ、召し上がれ?」と笑顔を添えて俺の前に差し出された。
いつもより甘く俺の心を温かくさせてくれた。
本当に魔法なのかもしれない。元気が湧いてきた気がした。
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