元気の魔法 伊藤翼の場合

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あの日から宗の態度は変わらなかったけど、マスターがかけてくれた魔法が今も続いてるようで変に落ち込む事はなかった。 そんなある日の昼休み、小さい頃親の離婚で離ればなれになっていた妹から連絡がきた。 二つ下の妹でお兄ちゃん子だったと記憶している。 宗のあとをついて回る俺と、そのあとをついて回る妹。 今考えると微笑ましい。 昔の事を思い出しくすりと笑った。 ほんわりした気分でいると、続けて送られてきたメールには、俺に会いたいと書かれてあった。修学旅行に来ていて、取れる時間は今日の放課後しかないと言う。 俺も会いたい。妹だし可愛くないわけがない。 だけど、俺の親の離婚は宗の心も傷つけていたように思う。 小さな身体で「オレがずっと一緒にいてやるから寂しくないだろう?」って抱きしめてくれた手は震えていた。 俺を置いて行った母親への怒りなのか一人残された俺への哀れみなのか、分からないけど宗にあの日別れた妹と会うと伝えたら何て言うだろう? 怒る?止める? 宗にとっては俺を捨てた母親と妹は同じなのだから。 俺は宗に妹の事を伝えないまま妹に会いに行ってしまった。 結局考えてもどう言っていいのかわからず、何も告げられなかったのだ。 久しぶりに会った妹は長い髪をキラキラとさせ俺の姿を見つけると嬉しそうに微笑んだ。何の曇りもない笑顔。それだけで愛されて育てられているのが分かった。 父親は仕事が忙しく俺はひとりぼっちだったけど、宗がいつも側にいてくれて寂しいなんて思う暇なんかなかった。 だから素直に妹が幸せに育っていてくれて嬉しく思った。
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