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俺は妹と別れたあとも宗に連絡を取ることができずなかなか眠る事ができなかった。
ようやく眠れたのは早朝5時過ぎで、今は夕方の5時。
学校さぼっちゃったな……。宗きっと心配してるよな…。
こんなに宗と連絡をとらなかったのって初めてかもしれない。
連絡したいけど絶対昨日事とか聞かれるだろうし、うまく説明できそうにない。
宗に嘘はつきたくないし、どう言えばいいんだろう…。
いつもいつも考えるのは宗の事ばかり。
宗…寂しいよ……。
じわりと涙が浮かぶ。
突然、チャイムが勢いよく鳴った。
肩がびくりとなる。
「翼―翼、いるんだろう?開けろー」
宗の声だった。
俺はおそるおそる鍵を開け宗を招き入れる。
「翼っ」
え?っと思った瞬間宗に抱きしめられていた。
「宗――――っ?」
「お前なんて顔してるんだよっ寂しいなら寂しいって言えよっ」
「宗―――」
「約束しただろう?俺がお前と一緒にいてやるって。まぁ、他に、慰めてくれる相手が、いる、なら……オレは、別に…」
と、離れていこうとする宗。
俺は宗を逃がさないように今度はこっちから抱き込んだ。
「いない!宗以外そんなのいないし、いらない!」
俺の勢いに宗は少し身じろぐ。
「昨日、お前、その……オレの事ぶっちして女の子と、その…いたじゃん?」
と、困惑気に問う。
見られていたのかと血の気がひいた。
俺は覚悟を決めた。
嫌な思いをさせるかもしれない。だけどちゃんと伝えなきゃダメだ。
「昨日お昼に妹から連絡来たんだ」
「妹って、愛ちゃん…?」
「うん。修学旅行であの時間しか時間とれないって。少しだけでも会いたいって。でも宗にうまく説明できなくて、黙って会いに行ってしまった。―――ごめん」
「そっか。それでお前愛ちゃんに会ってどう思った?」
「幸せそうで、よかったって」
「そっか、そっか。ならいいじゃん。翼がそれでいいなら俺もそれでいい。細かい事はこの際忘れてやるよ」
「宗………す、き」
男前な宗に思わず零れた俺の気持ち。
ずっと一緒にいたいから言わないって決めていたけど、ずっと一緒にいたいから言わなくちゃいけないって思った。
「えっ?」
「宗、俺、宗の事が好きだよ。だから最近寂しい。昔みたいにもっと一緒にいたいよ。これからもずっとずっと一緒にいて?」
「翼……。オレも好き…。遠慮はやめる。一生そばにいてやる。もう諦めてやんねー。覚悟しろよ?」
「うん。諦めないで?」
額をくっつけてお互いの鼻先が触れ合いそうなくらい近くで笑いあった。
あぁ宗の笑顔だ。大好きな笑顔。
俺の向日葵。
伊藤翼の場合-終-
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