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自信の魔法 小田敬の場合
僕はぱっとしない。見た目も性格も。
16年生きてきて恋人と呼べる人はいない。
溜め息をつきながら自分のぽよんとしたお腹を摘まむ。
ごはん減らしてるんだけどなぁ……ちっとも痩せないなぁ。
「敬君、溜め息ついてどうした?どこか分からないところでも?」
しまった。今家庭教師の先生に見てもらってるところだった。
「い、いえ。ちょっとぼーっとしちゃって、すみません」
恥ずかしい……さっきお腹つまんじゃってた。
見られてないよね?
見られてたら恥ずか死んじゃう。
ぼぼぼっと音がするほど顔が真っ赤になるのが分かった。
「ぼーっとって、どこか具合でも悪い?最近顔色がよくないように見えるんだけど……本当大丈夫?」
心配そうに僕の顔を覗き込む先生。
近い、近い、近いっ!
「だ、だ、だ、だ、だい、大丈夫、れすっ」
あ!噛んじゃった!
先生はくすっと少しだけ笑って僕の頭をそっと撫でた。
「無理しないで?体壊さないようにね。敬君は頑張り屋さんだから頑張りすぎないか心配だよ」
「はひっ」
なんでなんでなんでなんで!
先生はすぐ僕の頭撫でるから恥ずかしい。
何の意味もないって分かっているけど、恥ずかしいよ。
一撫で二撫での後離れていく先生の大きな手。
恥ずかしいのに止めてほしくないなんて思っちゃう。
僕はこの家庭教師をしてくれている福田大吾さんの事が好きだ。20歳で僕より4つ上の大学生で兄の友だちで、以前からうちに遊びに来ていて顔は知っていた。
僕が高校に入って勉強についていけないって兄からきいて家庭教師に名乗り出てくれたんだ。
頭が良くて恰好よくて、笑った目が優しくてどんどん好きになっていく。
先生、せめてこの無駄なぜい肉がなくなったら告白してもいいですか?
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