白い天使の少女と向日葵の少女

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 灰色の先には信じがたい景色があった。  限りない青の眩しい空の下、ログハウスとまた限りない広さの向日葵畑。白い天使の少女が土ごと掬った向日葵のために用意されたのかと思う。楽園とは、正にここのことではないかと感じることだ。  真夏なのかとても暑くて強い日差しが、彼女にとって眩しく感じていた。 「──優しい目ね」  女の子の声が耳に入った。  声のする方へ振り向くと、声の主は向日葵の世話をしているようだった。烏の濡れ羽色の長くて美しい髪に、同じ色で統一したように黒いセーラー服を着ている──向日葵のような少女だ。  彼女の無邪気な瞳が覗いて来る。  白い天使の少女は文字通りに見た目は未だ天使ではあるのだけど、そんな目をしている自覚は無かったし、性格もそんなに優しい訳じゃないし、自分のことながら天使っぽくないと認めている。しかし彼女にそう言われるとは思ってなかったため、白い天使の少女は照れ臭く感じていた。  向日葵のような彼女に呼ばれた気がした。  ──おいでよ。
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