向日葵の海に溺れて

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向日葵の海に溺れて

 清々しく晴れた空の下、ログハウスと限りない広さの向日葵畑。  そんな景色とは全く真逆の季節からやって来たように、白い天使の少女は黒いセーラー服の少女と出逢った。  出逢ってからの二人は日を重ねる度に仲良くなっていく。  白い天使の少女は天界に帰らず、ログハウスと向日葵畑のその場所でずっと、向日葵の少女と一緒に過ごしていた。ベッドから起き上がると、毎日のように彼女を探して見つけては訊く。 「今日は何するの?」 「かくれんぼしよう」  彼女は昨日と同じように笑顔でそう云った。 「今日も?」 「今日も」  晴れている日も、雨の降る日も、毎日やっているけれど、彼女は飽きないそうだ。  ここはかくれられる場所が多いから、『次はどこにかくれてみたら自分が見つかり難いだろうか』と考えるのが楽しいらしい。  ログハウスの窓を開けてから外に出てみて、温度の違いを感じ取る。中に居る時よりも暑くて溶けそう、……やっぱり中に居たかった。こんな筈じゃなかった。 「偶には違う遊びでもしないの?」 「そうだね……、ルツェはどんなのがいいの?」  そう改めて言われてみると、直ぐに思い浮かぶことは無かった。  誰かと一緒にすること、それはルツェと呼ばれた白い天使の少女の中では、上司から与えられた任務をこなすことしか頭に無かった。 「……歌を、歌う?」  今までの過去を振り返ってみて、やっと思い付いたのはそれだった。 「歌が好きなの?」  向日葵の少女に聞かれてみて、ルツェは直ぐに頷けなかった。自分の中で好きかどうかが分からない。  どうして思い浮かんだのかは── 「人間の世界に居た時は色んな歌が流れてた。だから……口ずさむのが、好き……かな?」  そこで改めてルツェは頷いた。  人間の世界で彼女は任務の合間に、ジャンルがどれとか明確に分かる訳ではないが、兎に角色んな歌を耳にしたそうだ。それを聞いてはふと歌いたくなって、閉じてた口の裏側で調子を合わせようとしてたことがあったらしい。
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