向日葵の海に溺れて

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「私でも分かる歌があるかなぁ……」  向日葵の少女は少し考え込んだ。 「中に居ても楽しめられる遊びでしょう?」 「うーん……」  ルツェは兎に角、暑い外に出るのを避けたかった。 「向日葵たちに聞かせてみたらどうなるか、気になるかなぁ」  そうだ、それに考え付く可能性もあった。  しかし向日葵の少女に罪は無く、その無邪気な発想にルツェは複雑な心境で項垂れた。 「──はい」  彼女の声と同時に、ルツェは頭の上に何かが乗った感覚を覚える。 「え?」  彼女の頭の上には麦わら帽子があった。 「暑くて大変でしょう? それ、あげる」 「ありがとう……」  向日葵の少女なりの気遣いらしい。  ルツェはそれが嬉しくて、その日から暑い外に出る時は麦わら帽子を欠かさず被るようになった。 * * * 「あの子は……」  そう呟く少年の目の前には、向日葵の少女の姿を映し出した水晶があった。そこは全てが雪のような真白に包まれた部屋だ。 「どうしたの? ノエルくん?」  その部屋にはもう一人、背の低い男の子も居た。  彼はノエルと呼ばれた少年の様子が気になっていた。 「……うぅん、何でもないよ」  ノエルは彼女の姿を見て思うところがあったようだが、今は心の奥に仕舞い込むことにした。 「しかし興味深いね。あのルツェに友達が出来るなんて思いもしなかった」 「……あの世界って、天界でも現実世界でもないんだよね?」  ルツェは天界の社会が退屈で嫌になって飛び出した。天界から飛び出して、現実世界にありそうな向日葵畑に辿り着いた。  だけどその場所が現実世界のようには、ノエルには見えなかったらしい。そのことにカミサマは一瞬驚いていた。 「──そうだね。あの世界は……天界と魔界の中間地点というところかな。うん、“向日葵の狭間”と呼ぶことにしよう」 「……もしかして今、考えた?」 「そう今、考え付いた」  たった今、その世界の名前が決まったらしい。 「あれは……カミサマが作った世界なの?」
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