向日葵の海に溺れて

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 そういえば誰かが言っていた。  言葉の重みは、思いが比例する度に雫の数と共に増えていく。  分かっている。  それなのに雫がまた落ちたんだ。 「……」  ルツェは彼女の後ろの離れたところに居て、ただ立ち尽くしていた。  彼女は向日葵の少女に何もしてあげられることが無かった。向日葵の少女には向日葵に掛けてあげる言葉が止まらない反面、ルツェには向日葵の少女に掛ける言葉が出ずにいた。  こういう時、どうすればいいのか彼女は分からずにいた。ただ見守っているだけでいいのだろうか。継ぎ欠けの言葉が只管、(から)の宙に舞う。 「……一つ、約束しても良い?」  向日葵の少女は心に何とか壁を作ったそうで、雫が落ちるのを無理矢理に止めた。向日葵を枯らさないように、思い思い前向きに心の壁を強くしようとする。 「もう泣かないから。……また来年、この季節になったら、また会お?」  そう約束しても来年はきっと、また会えない。  だってこの季節の時間は、その年に一度きりなのだから。  また同じ季節が巡って来たとしても、その時間に会う君はきっと同じようでも違う"君"。新しい種から生まれ育つだろう"君"だから、今の君に二度ともう会えることなんて無い。  向日葵の少女はそう考えているらしい。分かっていた筈なのに── 「……ゴメンなさい。やっぱり、また会えるなんて……」  悲しくも壁が崩れてしまい、向日葵の少女の顔から雫は再び零れ落ちる。その強過ぎる思いのせいで向日葵は受け止められず、徐々に枯れていってしまった……。 「……もう約束を破ってしまう私なんて、……最低だよね」  そんな枯れていく向日葵の一つを、向日葵の少女は優しく抱きしめた。  他に少し枯れてしまった向日葵の幾つかは、雫で出来た海の水面に浮かんでいた。水面に波紋が出来るとそこに、向日葵たちは枯れているのに、咲くように拡がっていく。
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