なんてことない日々

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* * *  白い天使の少女は大事な麦わら帽子を被って、ログハウスから外に出ようとする。扉を開けると、彼女の前に黄色い紅葉が出迎えてくれたように一枚、またもう一枚、ひらひらと舞い落ちて来た。  ログハウスの南側に向日葵畑と湖があるが、北側には未だ立ち入ったことが無い林がある。きっとそこから風に流されて来たのだろう。  金木犀の香りがどんなのか実はよく知らないけど、今感じ取ってるのがきっとそうなのかもしれない。  白い天使の少女はその香りを林の方から微かに感じ取っていた。 「……ねぇ、ルツェ」  ルツェと呼ばれた白い天使の少女は、向日葵の少女の方を振り向く。 「探索ってどういう風にするの?」  向日葵の少女は、探索とはどういうものなのか知らなかったそうだ。 「──自由に進んでみて、その先に何があるのか調べてみるの」  言葉で言い表すならそれくらいしか無い。  何をするのも自由だから、こんな場面に出会した時はどんな風に動くとか、決められた選択肢は場面によって変わっていく。 「具体的に何するのか……説明するよりは、動いてみた方が良いかな」  言い表すのに悩むくらいなら、先ずは行動して見せつける。  ルツェはそれを自分の中での基本ルールにしている。いつまで悩んでいても物ごとが進まないからだ。  二人はログハウスの北側に回って、林の方を臨む。  どこまで行こう?  一歩進めば、黄色い樹が左右に並んでいる。  二歩進めば、本格的な黄色の林で更に拡がりを見せようとしている。  数歩進んで奥まで行こうと近付けど、秋は未だ来たばかりだ。黄色以外の色が中々見当たらない。 「ずっと向日葵畑に囲まれていたから、銀杏に囲まれると秋らしさを感じるね」 「銀杏がこんな近くにあったなんて知らなかったわ」 「向日葵の世話だけでも毎日が忙しかったものね……」  向日葵畑は思ってたよりも広く、これまでは毎朝早く起きても世話するだけで半日が終わっていた。
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