なんてことない日々

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 明るい内にログハウスに帰ろうとしなければ、暗闇の迷路を攻略しなくてはいけなくなるために、一日で出来ることも限られていた。  しかし向日葵が咲く役目を終えたところで新しい種も収穫出来たら、次の夏が巡って来るまでは、広大な向日葵畑を世話する必要も暫く無くなる。 「そうだ、探索するなら目標もあった方が進みやすいかな」  目標が決まると視野が少し狭くなるが、形の無いものを闇雲に探すよりは探索が捗りやすい筈だ。 「……紅い紅葉を見つけられるかな?」 「じゃあ、それを目標にしよう」  今日の探索の目標はこれで決まった。  紅い紅葉を見つけに行こう。 * * * 「──あの場所を“向日葵の狭間”って呼んでたけど、ただの畑になっちゃって、向日葵が無くなっちゃったじゃん」  そう呟く少年の目の前には、二人の少女の姿を映し出した水晶があった。そこは全てが雪のような真白に包まれた部屋だ。 「うーん……、“向日葵の狭間”改め、“黄色の狭間”?」 「何だよ、それ」  その部屋にはもう一人、背の低い男の子も居る。  都合で名前が変わってしまうのが可笑しくて、少年は笑う。 「これまで黄色ばかりだったし、何も可笑しくないだろう? ノエルくん」  確かに向日葵と銀杏と黄色ばかりだったけど、狭間という単語は他に譲れないんだなと、ノエルと呼ばれた少年は思っていた。 「カミサマが作った訳じゃないそうだけど……あの世界って凄く広いんだね」 「ボクも驚いた。つくづく人間の想像力というのは、恐ろしさを感じてるよ」  カミサマと呼ばれた男の子は、ノエルも含めた人間の凄さに関心しているようだった。底が知れないから興味深く感じたのかもしれない。 「──あの向日葵の女の子は僕と同じ、人間なんだよね?」  ノエルは疑問に感じていたことがあった。  少女たちの居るそこは人間の作った世界らしいけれど、現実世界ではないところに彼女ただ一人しか居なかったのが、何だか普通じゃない気がすると。
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