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背の高い方の男子がクロエに声をかける。
金色に光る目が突き刺すような視線を向けてきた。
「廊下に、落ちていました。拾ったら、いつの間にか指にはまっていて……」
もう一人の薄氷の瞳は、怪訝そうにクロエを見ている。
言い訳にしても、もっとマシな言い方があるだろうというように。
「…………お前、名前は?」
眉間にシワを寄せ、金眼が聞いてきた。
「リュカ……リュカ・シャロン」
当然、クロエはリュカの名前を名乗る。
「シャロン男爵の子息か。確か、妹がいたな」
考える仕草をした彼に、クロエは心の中で慌てていた。
男装した妹が、兄を名乗っている――と、バレたのではないかと気が気でない。
難しそうな顔をしていた金眼の男が口を開く。
「リュカ・シャロン」
「はい」
「俺と結婚してくれ」
「はいっ?!」
名前を呼ばれたあと、突然の言葉にクロエはツッコミも忘れて間の抜けた声を出した。
「兄さん、さすがに引いているよ。彼」
「俺は回りくどい言い方は出来ないんだ」
薄氷が呆れて声をかける。どうやら二人は兄弟のようだ。
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