七色の指輪

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 それならば何で廊下の隅なんかに落ちていたのか。  クロエは聞きたかったのだが、自分が質問できる立場でないことを悟って黙ったままだ。 「恋愛結婚を否定する訳じゃないけれど、王族に相応しい伴侶を選ばなくてはならないんだ。特に、次期国王になる兄さんは」  ちらり、とクロエをみてラファエルが言う。  その視線はクロエの内面を見透かすようだった。 「そ、それなら、尚更……」  男装して、兄のリュカとして学園生活を送っている自分は相応しくない――クロエはそう叫びたかったが、唇を噛んで耐える。  嘘をついていることが明るみになれば、シャロン家は取り潰されてしまうかもしれないという考えが頭を過ったからだ。 「ひとまず、指輪を外そうか」 「えっ、これ、外れるの?」 「兄さんがもう一度魔力を込めれば外れるよ。ね、兄さん」  ラファエルが兄であるガブリエルを振り返るが、彼は難しそうな顔をしていた。 「兄さん」 「ああ、外すのは構わないが……」  ちらちらとクロエの様子を伺いながら、ボソボソと話すガブリエル。  彼は指輪を外すのを躊躇っていた。
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