阿修羅☆降臨

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****  夕陽が落ちて暗くなったPM18:00。  ガヤガヤ……  スーパーONIYASUの店内には、仕事終わりの主婦や部活終わりの学生で賑わっている。  いくつかある陳列棚の1つに、在庫をチェックするコヅチと買い物カゴを持って喋るミウマの姿があった。 「はあ……どうしよう。マサヨシに連絡せず、出てきちゃったけど大丈夫かな……」 「…………」 「でも連絡したら絶対怒られるし、俺もついて行くって言いそうだからしょうがないよね」 「…………」 「今頃、雅美はどうしてるかな……まさか意外に寂しがったりしてッ!?」 「…………あのお客様」  苛立ちを滲ませたコヅチは、無理やり口角を釣り上げて営業スマイルを作った。 「大変申し訳ございません。……無駄話でしたら店外でしていただけますか?」 「えーー。手は塞がってても耳は空いてるんだし、少しくらい話聞いてよ」  ブチッ  するとコヅチはミウマの頬に人差し指を突き刺し、周りに聞こえないよう小さな声で怒鳴り始めた。 『……ふざけるな。俺は夜10時に集合って言ったよな?なんで4時間も前に来てんだよッ…!』 「いでででッ…!!だって暇だったし、マサヨシにバレたくなくて」 『なら、どっかで時間潰せるだろ…!?こっちはバイトで必死に金稼いでんだから邪魔すんな!』 「鳴家(やなり)くん。そこで何をしてるんだ?」  ギクリッとコヅチは身体を強張らせ、冷や汗を掻きながら後ろを振り向いた。 「お、鬼瓦(おにがわら)店長………」  そこには2メートル超えの巨躯をもつ男が立っていた。  鋭く尖った目に赤みがかった黒の短髪。 「あっ!」  ミウマは一目見て、目の前にいる男が"鬼"であることに気づいた。  鬼瓦は頭二つ分小さいピンク髪の少年を見下ろし、驚いたように片眉を上げる。 「なんだ人間のお客様かと思ったら、俺たちの同胞じゃないか。地獄で生きる者がどうして人間界(ここ)にいる?」 「あ、あのーー……店長。コイツはちょっと訳ありでして……」  ニパッ  ミウマはいつものあどけない笑顔を浮かべ、コヅチのフォローを無視して自己紹介をする。 「はじめまして店長、ボクは堕天使ミウマです!ただいま人間界で花嫁修行をしています♡」 「……は?」 「ぎゃあああ!何言ってんだテメエは!?」  コヅチが真っ青な顔でミウマの口を手で塞ぐと、鬼瓦は驚いたように目を見開いてミウマを見る。 「す、すみません店長。コイツ頭の中のネジが何本かブッ飛んでるんです……。コイツと話すと馬鹿になるので喋らないでください」 「ぶはあっ!いやあ、まさかスーパーONIYASUの店長が本物の鬼だなんて知らなかっ……ングッ!!」 「お前は少し黙ってろ…!!」  コヅチは再びミウマの口を塞ぐと、愛想笑いを浮かべながら鬼瓦から少しずつ距離を取っていく。 「店長、本ッ当すみません!このバカは早急にスーパーから追い出しますんで……」 「……いや、別に買い物してくれるなら追い出さなくて良いぞ。商品を買ってくれたら、たとえ人間でなくてもお客様(・・・)だからな」 「ブハッ、さすが店長分かってる!」 「あっ!コラッ、てめえ!!」  コヅチの拘束からあっさり抜け出すと、ミウマは買い物カゴを持って歩き始めた。 「しょうがないからコヅチくんの言う通り、時間になるまでどこかで暇を潰しておいてあげる。んじゃ、また後で!」  身の毛がよだつ投げキスを寄越した後、ミウマは背を向けて別のコーナーへと移動して行った。 「……疲れた……」  裏口に移動した後、コヅチはガクリと肩を落としてため息を吐く。  一方隣にいた鬼瓦は顎に手を当て、何かを考えている様子だった。 「…………」 「店長、どうしたんですか?急に真顔になって……もしかしてミウマがさっき何かしましたか!?」  コヅチが声をかけると鬼瓦の顔は元に戻り、鋭い視線をこちらに向けた。 「いや、そうじゃない。……アレが噂に聞いた"堕天使"かと思ってな。想像と全く違ってビックリした」 「え?」 「昔は酷く荒れてたみたいだが……。さっきのやりとりを見ている限り、だいぶ落ち着いてきたみたいだな」  鬼瓦の言葉を聞いた瞬間、コヅチはゴクリと生唾を飲み込んだ。 「あの……鬼瓦さんが聞いた堕天使の噂って一体……」 「そりゃ、耳を疑うような恐ろしい内容だったよ」 『天国の掟を破り、神を殺そうとした天使』 『翼を引きちぎられても尚、周囲を血に染め、地獄から這い上がり神を殺そうとした』  それを聞いたコヅチは静かに背筋を震わせる。 「堕天使は冥界で1人しかいないから間違いない。それに俺が地獄で獄卒をしていた時は、堕天使自体存在しなかった」 「!!」 「つまり堕天使ミウマは唯一、天国の掟に反した異端という訳だ」  周囲の雑音が消え、鬼瓦の落ち着いた低い声がやけにハッキリと聞こえた。 「家鳴君、彼には気をつけたほうがいい。堕天使(あの子)は異常だよ。油断していると痛い目に合う」
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