ショー・ウインドーの女

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 駅でいうと銀座一丁目の辺りは、ひとつ通りを入ると町並みもどこかクラシカルで雰囲気がある。画廊が多く、東京でも有数の美術スポットだ。  伝えていたよりも少し早く着いた事もあって、ぼくは角を折れて寄り道してみるつもりだった。  前方を見てぼくは、あっと声をあげそうになった。  洒落た外観の画廊から年嵩の男性と仕立の良さそうなスーツを着たショートカットの女性が連れ添って出てきたところだった。  彼女だった。  二人は車に乗り込むところだった。  ぼくは立ち止まり、彼女を見つめた。  彼女もぼくに気づいた。気づいていた。歩きながら、貌が微かに動いてぼくの方を見続けていた。  ぼくが一歩、踏み出そうとしたのと同時に男性が車に乗り込み、彼女は助手席にするりと乗り込んだ。そう、まるであの日の踊るような身のこなしで。
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