ショー・ウインドーの女

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 真夜中になろうというのにまだ通りは人が大勢おり、あちこちで嬌声が聞こえ賑やかだった。世間の夜はまだ始まったばかりだとでも言わんばかりだった。週末ならこんなもんかと思いながら、もう随分、外で夜明かしなどしていないなと考えていた。  伊勢丹の前辺りまで来ると幾分人の数も減った。この老舗高級デパートは、移り変わりの早いこの新宿で、今では貴重な古風な外観を保っていて、その昔ながらの額縁のような飾りを四辺に施したショー・ウインドーは、そこだけ現代から切り離された空間のようにも思えた。もっとも、中に飾られているのは最新のブランド・ファッションのコンセプト展示や高価そうな宝飾品なのだけれど。  そのショー・ウインドーからの照明を浴びながら、一人の女性がゆっくりと歩いて来た。
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