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「え?! わかったの?!」
私の言葉に対し一番初めに言葉を発したのはナギリさんではなくウリネだった。
兄であるナギリさんは妹の背を一度見た後、どこか信じられないと言った顔で私の顔を見ていた。
「……うん、病名は……依存症……」
本来、依存症と呼ばれる物はアルコールや煙草による物とされている。
けれどもそれは人……この場合は悪魔だけど……依存症。
兄であるナギリが離れるまでは平気でも、見えなくなるとまるで発作のように異常を起こす。
それだけ妹のキナは兄に依存していたのだろう。
もちろん家族関係、住んでる環境、状況を私は知らない。
それでも兄が見えなくなっただけでおかしくなるのは異常である。
だからこその依存症、そしてそれを治す方法は…………。
「そのなんとか症を治す方法は?!」
「……ありますけどぉ、厳しいですよぉ?」
「厳しい? 何か特別な物が必要なのか?! それなら俺の命に代えても取ってくる! 場所を教えてくれ!」
兄が妹を助けるのに理由はいらない、という想いで私の両肩を掴み言う。
それに対してウリネは冷静な顔で私の顔を見て言う。
「カオリ、その厳しい治し方はなんなの?」
「妹さん、キナさんが兄であるナギリさんから離れてぇ、一人で居られるようにするって……ことぉ」
優しい口調で言った言葉をちゃんと理解できてないナギリさんはどこか簡単そうに微笑んだ。
一方、先ほどの状況を見て私の言っている言葉を理解したウリネは両腕を組み、真剣な瞳で私の次の言葉を待っていた。
「でもぉ、一人で居られるようにぃするってことはぁ……あの症状を兄であるナギリさんが治るまで何度も何度も見ないといけないしぃ、この子の負担にもなっていくことなんですぅ」
それを聴いてナギリさんはやっと私の言っている言葉を理解したことで顔を青ざめていた。
「……ねぇ? キナさんはお兄さんいないと嫌かなぁ?」
「え? 大丈夫だよぉ?」
しかし逆にキナさん自身はまるで問題になっていないかのように笑顔を浮かべて私に言った。
状況が理解できていないのか……はたまた、心配させないようにしているのか、そのどちらにしろ……話を聴いてみることにした。
「本当にぃ? お兄さんがしばらく間、キナさんを一人にしちゃうんだよぉ? それでも平気なのぉ?」
「うん! だって……」
心配させないようにしているのかと思い、私がそういうとキナさんは笑顔を浮かべて頷き言った。
「だってお姉ちゃんがいるもん!」
「え……?!」
その言葉に私は驚いた。
兄に依存している妹が兄がいなくなっても平気。
それは兄を心配させないための配慮と我慢だと思っていた。
しかし実際そう思って……いや、勝手に判断していたのは私だった。
キナさんの満面の笑顔と共に放たれた言葉と目線の先にいたお姉ちゃんそれは…………私だった。
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