患者さんは兄妹

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「な、なんで私なのぉ?!」  驚く私にキナさんは笑顔で私に抱き着くままだった。 「さぁ? 私はわからないわよ?」 「俺にも……」  私の疑問に答えてくれる人は……いない。    誰かが言っていたのか何かに書かれていたのかは覚えていない。  だけども、こう書かれていたのだけは覚えている。  依存症の対象は時と場合によって変わる……と。  しかしその対象は本来であれば身近な人物。  兄であるナギリさんが対象から離れた場合、次に近しいのはこの場合ウリネになる……はず。  そうならないと言うことは……何か他の原因がある。  何か何か見落とし……。  それを考えていると私に抱き着いたままのキナさんがヒントをくれた。 「お姉ちゃんは大好きー!」  兄妹。  兄は妹に優しい。  しかし兄と身近なウリネはキナさんからすれば優しく扱ってくれる対象ではなかった。  そんな時、相談に着て対応した私がキナさんが言う優しい対象に入ってしまった。  と言うことは……この原因は…………。 「私……だったんだぁ」  だけど、この状態で先ほど言ったように無理矢理私から離し兄と一緒に帰って貰ったとしても依存の対象は私のまま、兄に戻ることは多分ない。  むしろ悪化してしまう可能性がある。  対応は二つ……。  一つ目は兄に依存が戻る可能性に賭けてこのまま帰って貰う。  もしも戻ったとしても結果は最初と変わらず何度も繰り返す。  二つ目はこれ以上依存の原因が増えないように兄であるナギリさんと私で対処する。  どう考えても後者以外の選択肢はない。  そう考えた私は三人に対し言ってみることにした。 「こんな状態になってしまってぇ……ごめんなさい……」 「いやいや、俺はよくわからないんだが……どういうことなんだ?」 「実は…………」  私は先ほど話をした依存症、そして依存の相手が変わったことと対処方法の説明をした。  それに対し驚きはしたが何か納得したのか頷くナギリさんと……腕を組み、何かを考えているウリネがいた。 「簡単な話じゃない、ここにキナとナギリを居させればいいんじゃない?」 「た、たしかぃベッドもあるけどぉ……」 「しかし迷惑がかかるだろ?」 「なら働かせて貰えばいいじゃない、兄のあんたは護衛なり荷物持ちをして、妹は……カオリの手伝いとか?」 「それならなんとかなる、な? キナ」 「うん! お姉ちゃんと一緒ならなんでもいい!」    私が何か喋る暇もなく三人の話は進み、気づいた時には兄ナギリと妹キナが住み込み? でここで働くことになっていた。 「まぁ、悪魔騎士に悪魔魔術師は優秀よ、頼りになるからいいじゃない」 「ウリネはどうするのぉ?」 「私? 私は適当にぶらぶらしてるから大丈夫、暇見てきてあげるから!」  そういうとまるで逃げるように建物から出て行った。 「ぁ……」  逃げられたことに気づいたのはウリネが建物から姿を完全に消した直後だった。  それを見送る暇も、時間もないままその場に立っているナギリさんと私にくっついて笑顔を浮かべているキナさんに目線を送った。 「どうすれば……いいのぉ?!」 「これからよろしく頼む、なんなりと言ってくれ先生」 「お姉ちゃん! 私も頑張るねっ!」  私の思い困惑を他所に二人はやる気と笑顔で見せてそう言った。
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