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「さっき話した獣人を……そう、治癒した、これが原因……治癒なんてモノがない世界で治癒をしてしまった、それに世界は治癒者……医療ができる者を選んだ、人を助け……誰かのために力を振ろうとする者を求めて」
「それが……私……?」
「ええ、あなたは赤ちゃんから老人、老婆まで愛情を振りまくが如く、笑顔で対応していた……それもこの世界に選ばれた原因ね、だって誰に対しても愛情が振り撒けるのなら魔物、魔族だって振るえちゃいそうじゃない? そ、これが治癒してしまった私の病気、そんなあなたを……カオリをここに連れてくるために必要な力だったのよ……」
「で、でも……それならウリネじゃなくて世界が……」
「神はこの世界を守護する……世界もまた神を守護する、簡単な話よ、私が治癒をしたことで、治癒者が必要だと世界に言ってしまったような物、だから世界は神である私にこの病気を渡すことであんなことができるようになってしまった……それがたとえ……一方通行だったとしても……」
その言葉で今までのウリネの行動が繋がった。
最初の地震で私を無理矢理、マグニカに行かせ治癒できるか世界が試す。
それが出来てしまったことで世界は私が必要だと判断した。
だからこそ元の場所? 世界には帰ることができない一方通行。
彼女が言っている病気と呼ばれた力。
その病名は…………私の口からけして言えない。
治そうにも本人しか治せない、けれども治すことができない不治の病に近い……そんな病名して病気……。
「……ごめんなさい、私の身勝手がこんな結果を……っ!」
泣き出しながら頭を下げるウリネを私は怒ることなく抱きしめた。
「んーん、謝ることはないよぉ、だってウリネはーーーー」
その先の言葉にウリネは救われた。
「だってウリネはその子を助けたのだもの……けして悪いことなんかじゃないよぉ、ウリネが助けなきゃその子は死んじゃってたんでしょぉ? なら……その行為は悪いことなんかじゃなくて良いことだったんだよぉ?」
「で、でも! 私はカオリをっ!」
「大丈夫、元の場所に戻れないのなら……ここで頑張ればいい……というかぁ……目の前で難病を抱えた子を医者として放置なんかできないもん」
神様が……世界が私を選んだ……選んでくれたのは嬉しい。
誰かに必要とされること、そして私を認めてくれたこと。
なによりも医者として私は目の前にいるウリネ、難病持ちの少女を放置できるわけがないから……。
「あり……ありがとぉ……!」
ウリネは私の胸で泣きながらお礼を言っていた。
そんなウリネを抱きしめ続けること数分? 数十分? そのままでいると診察所の扉が開かれた音が聴こえた。
「あ……」
それに気づきウリネを抱き起した後、離れて入口に向かおうとする私の服の裾を掴んだウリネが涙を拭きながら言った。
「たぶん、私の知ってる子達」
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