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「病気……ですかぁ……一体どんな病気なのですかぁ?」
兄であるナギリさんの言葉に私は質問を投げかける。
目の前で笑顔で浮かべている妹、キナさんの様子を見る限り外傷、内傷ともに正常で健康その物に見えた。
だけども一番長くいる家族で兄妹の兄が病気だと言うのだからきっと病気なのだろう。
「それが……俺にもよくわからないんだ」
「どういうことですかぁ?」
「俺が近くにいる時は全然平気で今みたいに元気なんだが……」
そこで話を区切ったナギリさんは私に懐いたキナさんに気づかれないように無言で診察室を出て隠れる。
その行動に対し私は何らかの意図があるのだと思い、何も言わずキナさんの相手を続けていた……が、ウリネは何を考えたのか棒読みのような言葉と共に言う。
「あらぁ……ナギリさんはどこにいったのかしらぁ?」
そう言いながら診察室の中を見回す。
すると……それは直ぐに起きた。
「大丈夫?!」
今の今まで元気が良く健康その物だったキナさんが両腕で体で覆い大きく震わせ、息が荒くなり、顔色も青色になり倒れそうになっていた。
それに直ぐ気づいたらウリネと私は心配し抱きしめるようにした。
しかしキナさんの容態は良くならずその症状は続いていた。
「……これがキナの病気なんだ、たぶん精神的な物だと俺は思っている」
そう言いながら診察室の中に戻ってくるナギリさんの言葉に気づいたキナさんは体を一気に起こし駆け寄り抱き着く。
すると先ほどの症状が嘘だったかのように元に戻っていた。
「カオリ、あれは病気? それとも他の?」
小さな声で話しかけて来るウリネに一瞬だけ戸惑う私。
病気、しかも精神的な物について勉強はしたし、そう言った患者さんは見てきたことがある……専門じゃないけど……。
だけどもそれは向こうの話で、こっちは人と言っても魔物だとか魔族と言った人外とも言える人々。
ウリネの時は症状も自分で自分がわかっていたため、話を聴いて理解ができた。
けれども今回はその周辺、そして本人すらも理解できない病気。
そんな物が数十分で理解できるわけが…………。
そんなことを思っていた矢先、私はあることを思い出してナギリさんに質問を投げかける。
「ナギリさん、キナさんのそれはぁ……ナギリさんが離れるとぉ、起こる物なんですかぁ?」
「いや? ある程度離れても問題はないな」
「ある程度ってぇ、どれくらいかわかりますぅ?」
「……俺が見えなくなる? ぐらいか? それぐらいしかわからん、申し訳ない」
冷静に考えて答えてくれたナギリさんは私に頭を下げる。
もっと説明し、理解して貰えれば対処ができるだろうと言う想い、けれども説明仕切れない想い、その両方が合わさっての物。
それは言葉にしなくても直ぐに理解できた。
「大丈夫ですぅ、症状……いえ、病名はわかりましたからぁ……」
私がそういうと、兄であるナギリさん、そしてウリネは驚いた顔をする。
しかし妹のキナさんだけは話を理解していないのかきょとんとしていた。
そんな子に近寄りしゃがむと私は笑顔で頭を撫でながら説明することにした。
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