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副社長は走って、私の目の前までやってきた。
「副社長…。あ、もう社長ですね…おめでとうございます」
私はぺこりと頭を下げた。夢がかなって、本当によかった。
顔を上げた瞬間、
「菜々!」
そう言われて、ぎゅう、と抱きしめられる。
「……っ!」
おかしい。涙が次から次へと流れてくる。悲しくなんてないのに。
―――そうか、嬉しくても涙ってこぼれるんだ…。
「泣かないで、菜々?」
「だって、久しぶりに……。名前、呼んでくれたから」
「うん。ずっと呼びたかった」
―――ずっと、私の名前を呼んでほしかった。その声で…。
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