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そして、昼休み。
「ねぇ、津倉さん」
と話しかけられて、振り向くと、
「姫野さん…」
昨日、副社長にお持ち帰りされた秘書課の同期…。
今日も相変わらず髪も服装もかわいい。
「副社長と何か関係あるの? あなたと副社長のどこに接点あるの?」
(副社長のお気に入りは私だけなんだから。昨日、すっごい気持ちよかったなぁ)
姫野さんの心の声に思考がやられそうになる。辛い…。そして、副社長と姫野さんに一気に嫌悪感が走った。結局やることやってんじゃん。だから嫌なの。なんでそういう事抜きに好きな人と『お付き合い』ってできないんだろう。私は思う。そうしていると、姫野さんは黙り込んだ私を不審に思ったようで、
「なに?」
(まさか本当に接点あるの?)
と顔を覗き込まれた。
「ないです。接点と言っても、昨日の飲み会では同じ場の中にいましたが、副社長は姫野さんのことしか目に入っていらっしゃらなかったし」
私は言う。実際、その通りだったし。
しかし、姫野さんはそれを聞いて、目を輝かせる。ま、まぶしい!
「えー! 本当ぅ?」
「はい、本当です」
「ねぇ、わたしたち、同期だけど、話したことなかったわよね」
そう言って、姫野さんは私の腕をがしっと掴んだ。「仲よくしようねぇ。菜々ちゃん♪」
「う…」
私は思わず呻く。だって心の中の声は、
(こんなダサい子が一緒にいれば、私の可愛さも引き立つし、周りから優しいネッって思われて株もあがるわ)
だったから。慣れてる。慣れてますよ? こんなこと幾度もあったから…。
私は、キラキラしたかわいい女子になりたいと願っているのに、そういう女子の内面は苦手だ。こんなの、わがままだろうか。
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