2章:逃げきれない理由

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そして、昼休み。 「ねぇ、津倉さん」 と話しかけられて、振り向くと、 「姫野さん…」 昨日、副社長にお持ち帰りされた秘書課の同期…。 今日も相変わらず髪も服装もかわいい。 「副社長と何か関係あるの? あなたと副社長のどこに接点あるの?」 (副社長のお気に入りは私だけなんだから。昨日、すっごい気持ちよかったなぁ) 姫野さんの心の声に思考がやられそうになる。辛い…。そして、副社長と姫野さんに一気に嫌悪感が走った。結局やることやってんじゃん。だから嫌なの。なんでそういう事抜きに好きな人と『お付き合い』ってできないんだろう。私は思う。そうしていると、姫野さんは黙り込んだ私を不審に思ったようで、 「なに?」 (まさか本当に接点あるの?) と顔を覗き込まれた。 「ないです。接点と言っても、昨日の飲み会では同じ場の中にいましたが、副社長は姫野さんのことしか目に入っていらっしゃらなかったし」 私は言う。実際、その通りだったし。 しかし、姫野さんはそれを聞いて、目を輝かせる。ま、まぶしい! 「えー! 本当ぅ?」 「はい、本当です」 「ねぇ、わたしたち、同期だけど、話したことなかったわよね」 そう言って、姫野さんは私の腕をがしっと掴んだ。「仲よくしようねぇ。菜々ちゃん♪」 「う…」 私は思わず呻く。だって心の中の声は、 (こんなダサい子が一緒にいれば、私の可愛さも引き立つし、周りから優しいネッって思われて株もあがるわ) だったから。慣れてる。慣れてますよ? こんなこと幾度もあったから…。 私は、キラキラしたかわいい女子になりたいと願っているのに、そういう女子の内面は苦手だ。こんなの、わがままだろうか。
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