2章:逃げきれない理由

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二人きりになった時、ふいに腕が緩んだ。私はすぐにそこを脱出すると、 「何言ってんだ!」 と叫ぶ。副社長は笑った。 「口が悪いよ、津倉さん」 「ふざけんな! 何考えてんの! ただでさえも変態ホイホイ体質なのに! これ以上、女子にまで嫌われたら生きていけない…!」 もう泣きそう。ってか泣いてる。だから思考がおかしかったのだろう。 副社長は、突然、ぶっ、と吹き出したと思ったら、笑いだしそうなのをこらえて 「…その、『変態ホイホイ体質』って何…!」 (変態が寄ってくるの!? 本当ならおもしろすぎる!) と言った。 「あなたには…関係あるけどありません!」 ってか、おもしろくなんてない! 実際、副社長もよってきてるじゃん! 自分で実証してるじゃん! そう思って、私は泣きながら歩き出す。 「ちょっと待ってよ」 「誰が待つか!」 そう告げて走り出した。 私は、車が通れないような細い道を走って帰る。足には自信があった。走る練習も幾度となくしたから。そして、マンションにやっと着いたとき、玄関ホールの高級椅子で座って待っていた男を見て思い出した。 ―――そうだ…。いくら逃げたって、マンション一緒だったんだ、と。
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