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私が走り去っていたころ、純のもとに弟の真がやってきていた。
「何してんの、純。今日はオヤジと食事会でしょ。外に車待たせてある。行かなきゃ」
「うん」
真は先ほど、純から走り去っていった女性の後姿を見て、あることに気づく。
「え? あれ、津倉さん?」
「うん、同じマンションみたい」
「じゃあお嬢様ってこと? なのに、なんであんなブラジャーしてんのかな」
真はずっと気になっていた。絶対にサイズが合ってない。間違いなく3サイズは落としているだろう。それに服装だって髪型だって、あの眼鏡だって、本人が好き好んで選んでいるようには見えないのだ。そう思いながら、純を見ると、純は今までに真が見たことのないような表情をしていた。
「って、純、どうしたの! めっちゃ笑ってるけど」
「え? そう?」
言われて気付いたのか、純は口元を右手で覆う。でも、楽しそうな笑い声が抑えきれずに漏れてきていた。そんな純を見て、真は驚く。
「…そんな楽しそうな純、初めて見た」
「おもしろいオモチャ見つけたからかなぁ」
純はそう言って、菜々が去っていった方向を見つめていた。
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